スケール感あるオリジナルなSF活劇が人気の劇団☆新感線が市川染五郎を主演に迎えて、魔物と契約を交わし口先だけで時代を制しようと野望を抱えるダークヒーロー“ライ”を通して究極の悪を描き2007年新橋演舞場正月興行として上演された『朧の森に棲む鬼』。豪華キャストによる想像を超えたスケールの壮大な舞台が観る者を圧倒し、2007年最高傑作の呼び声も高いこの作品が、デジタルシネマカメラをはじめとする最新の収録・編集技術を駆使した映像作品<ゲキ×シネ>となって映画館に登場する。

劇団☆新感線の演劇作品の<ゲキ×シネ>は、第一弾『髑髏城の七人〜アカドクロ』からはじまり今回で第5作目となるが、全国17スクリーンの一斉公開による上映は今回が初めてとなる。
新宿バルト9で行われた完成披露試写会には、主演の市川染五郎をはじめ、阿部サダヲ、真木よう子、そして劇団☆新感線の演出家であるいのうえひでのりが舞台挨拶を行った。

“いのうえ歌舞伎”と呼ばれる本作にちなんでロックテイスト満載のファッションで、歌舞伎チックなアバンギャルドなメイクで登場した染五郎は、「この日のために、サイパンで肌を焼いてきました。洋服は、いつもの普段着です。」と冗談を飛ばし会場を大いに沸かせる。

周りのすべての者を陥れ、あらゆる策略をめぐらせて、口先ひとつで時代の頂点にのし上がろうとする主人公ライという役について「観客はライの言葉はすべて嘘だとわかっていて舞台を見ているので、その上でいかにスリリングな展開をみせられるかを意識しました。上手くいった時には、自分がすべてを支配しているかのような感覚さえ覚えてしまいました。」と語る。
ライの弟分で、頭は弱いが腕っぷしだけはめっぽう強いキンタを演じた阿部サダヲは、「本当に市川さんがかっこよくて、映像で改めてみていても本当にかっこいいなって。」と誉め殺し。「大人計画ではやらないことを劇団☆新感線ではやっているので、演じていて気持ちがいい。花道を走るところなんて、映像で見ても本当に自分が気持ちよさそうだなって想いました。」と参加する楽しさ、演じる楽しさについて語った。
また、女だてらに党首として小国を率いる美女・シュテンを演じた真木よう子は、「実際に映像を見てると、自分が情けなくなってしまう。舞台は本当に体力勝負ですよね。歌や殺陣にも挑戦しているので、これで演技の幅が広がればいいなと思います。」と語る。
また、自分で演出した舞台でありながら<ゲキ×シネ>として改めて映像で作品を見直すことについては、まったく別の感覚をもっていると語る演出家のいのうえひでのりは「単なる舞台中継ではなく、舞台では引きで見えなかった役者の表情や細かい動き、編集によるカットや画面の構成など、映画として舞台とはまったく別のエンタテインメント作品に仕上がっていると思う。」と驚きをもって語った。
(Report:kaori watano)