日本のコメディ映画にいまや欠かせない存在である、三谷幸喜氏の第4作目監督作、『ザ・マジックアワー』の製作記者発表が、15日、東映撮影所で行われた。クランクインは先月の27日。現在は順調に撮影が進んでいるようだ。今作ではなんと町をまるごとセットにつくってしまいというこだわりぶり。一歩セットに足を踏み入れれば、もうそこは今回の映画の舞台、港町・守加護(すかご)。本物だとしか思えない町並み、細部にまでこだわった美術。手がけたのは、映画美術の巨匠、種田陽平氏。セットありきで、どんな登場人物が出てくるか考えたという三谷氏だが、そんなすばらしくリアルな守加護の町で三谷氏の十八番、ハイパー・ノン・ストップ・コメディを繰り広げるのは、佐藤浩市、妻夫木聡、西田敏行、深津絵里、綾瀬はるか、戸田恵子、小日向文世、寺島進のこれ以上ない豪華なキャスト陣。セットの前に映画の衣装でずらりと並んだ様子に、期待もふくらむ。三谷氏の指揮のもとにこのキャストが集えば、この映画、おもしろくならないはずがない。

マジックアワーとは、映画の専門用語で、夕暮れのほんの一瞬のこと。太陽は残っているが、陰がなく、幻想的な時間。この時間は一日のうちで空が最もきれいに写る時間でもある。「人生にたとえたとき、光り輝く短い時間というのは、誰の人生にもある。そんな人生のマジックアワーを描いています。」と、三谷氏がタイトルにかける想いを語った。

以下、監督、キャストからのコメント

三谷「ハイパー・ノン・ストップ・コメディということですが、ぼくもどういう意味なのかよくわかっていません。脚本は、コメディーとしては一番質の高いものが出来たと思います。魔法のような台本に仕上がりました。今回初めてコメディーをつくるつもりで望んだのですが、以前1分に3回笑う映画だと言いましたが、一回増えて、3分に10回笑う映画になっていると思います。」

佐藤「ぼくの役は村田大樹という名前なんですが、大樹と書いて「たいき」と読む。昔は「だいき」だったけど、役者として売れないので、「たいき」と改名したのだという説明を三谷監督からいただきました。脚本が面白いので、そのぶん役に対するプレッシャーは大きく、特に今回は胃に穴が開くくらいのプレッシャーを感じています。」
(コメディーに臨む心況について)「何をやってもコメディーだと思っていますが、三谷さんは笑わせるプロなので、いかに三谷さんの伝えたいことを伝えていくかがテーマです。コメディーの怖さを感じながら現場に臨んでいます。」
(コメディーの怖さとは)「どんなに現場のノリがあっても、決めた線を踏み外してはいけないし、逆に決めた線までは絶対にもっていく。きっちりと計算しないといけないですし、軸がぶれてはいけないという事だと思います。コメディーというのは一番難しいジャンルだと思います。」

妻夫木(初めて三谷作品に関わることについて)「以前三谷さんのお芝居を観て、これがコメディーなんだと感じました。以来三谷さんの作品が好きだったので、この場にいることができて嬉しいです。毎日緊張していますが、いい芝居ができるよう頑張りたいです
(自身のマジック・アワーについて)三谷作品に関われている、今だと思います。作品を通じて、日々新しい自分に出会えています。作品が完成後、振り返った時に、この時間がマジックアワーだと思えるんじゃないかなと思います。
(セットについて)ディズニーランドに匹敵するくらいすごい。ぼくに子供がいたら連れて行きたいくらい。細かいところにまで凝っている、すばらしいセットです。」

深津(魔性の女を演じることについて)「自分の事ばっかり考えていれば良いので、演じていて楽しいです(笑)。いろんなタイプの魔性がありますが、三谷さんの思う魔性の女性を演じたいと思います。
(三谷「深津さんはかなり役に入り込むタイプ。深津さん演じるマリは、ぼくが一番振り回されたいタイプの魔性ですね。」)」

綾瀬「三谷監督と先輩方に囲まれて緊張しながらお芝居をしています。思いきりよく演じたいと思います。」
(三谷監督の印象を聞かれて)「すごく丁寧で細かい、わかりやすい演出をしてくださるので、ありがたいです。」

小日向「以前テレビ局に衣装合わせに行った際、「マネージャーの方ですか?」と聞かれたことがあるので、マネージャーの役をいただいて「来た!」と思いました(笑)あのときの気分を思い出しながら役作りをしたいと思います。」
(佐藤浩市さんとの役者とマネージャーのコンビについて)
「(佐藤さんを)間近で見ていると、マネージャーの立場を忘れて、ファンとしてみてしまいたくなります。こいつを有名にしたい!という気持ちでやっています」

戸田「厚化粧に日々徹しています。監督からは、厚化粧をしろということだけで、特に細かい話し合いはなかったです。私が演じる蘭子というのは、過去の写真をものすごく貼っている女なんですね。とにかくたくさんの衣装で登場しますし、カツラも毎回違うものをつけています。ホクロの位置も毎回変わるので、そこにも注目して観てください。」

寺島「(三谷監督が「怖い人だと思っていた」とコメントした後で)有頂天ホテルのときはなかなか監督が目をあわせてくれなかったんですが(笑)、だんだん三谷監督の世界がわかってきた感じです。」
(ハードボイルドな役を演じることに関して)「今までは、刑事、やくざなどの役を演じる事が多かったんですが、今回はいままでにない引き出しを無理やり監督にこじあけられているような感じです。脚本が面白くて、ホントに映画を観終わった後、ウェストが3センチ減っているくらいの面白さです。」

西田「監督、スタッフ、キャストの皆さんと一緒に、アイデアを紡いでいいものをつくりあげたいと意気込んで現場に向かったのに、開口一番監督に、「なるべくおもしろいことはしないでください。」と言われてしまって・・・(一同笑)これほど無口な男になっている現場はほかにないくらい無口です。」

最後に三谷監督は、ライバル作品に勝てる自信があるかとの質問に、「勝てる自信がないとやらないですよ。・・・そんなにないです(笑)。また今回もジブリの新作と時期がかぶってしまうので、どこまでつきまとってくるんだという感じです。」とユーモアたっぷりに答えた後、「邦画でコメディーというのは、そんなにないので、この唯一無二の豪華な作品に、その意味でライバルはいないです。」ときっぱり。

三谷節が随所で炸裂し、出演者記者陣ともどもを笑いの渦につつみ、はやくも腹筋に効いた製作発表だった。

(Report:Akiko I)