原爆投下から13年後の過去と現在の時代を背景に、二人の女性のふたつの物語を描いた映画『夕凪の街 桜の国』の初日舞台挨拶が行われた。
登壇したのは、田中麗奈、麻生久美子、吉沢悠、中越典子、伊崎充則、藤村志保、ハープ演奏者で今回音楽を担当した内田奈織、佐々部清監督。
広い会場であるにも関わらず立ち見も現れる程の満員御礼で、出演者達は喜びを語り、中でも中越典子は挨拶中に感極まって思わず泣いてしまうという場面も見られた。
また、堺正章の青年時代を演じた伊崎充則は現在30歳ながら学ランを劇中で見事に着こなし、会場でも「いけるな、と思った方は挙手を!」との伊崎の声に多くの手が上がり笑いを誘った。

●田中麗奈:「こんなに映画館がいっぱいになり、凄く嬉しくてちょっと涙が出てしまいました。今の気持ちは凄くホッとしています。」
(撮影を振り返って印象的だった事は?)
「最後のシーンで七波(田中麗奈)がおばにあたる皆実(麻生久美子)の写真を見るところが、凄く大切だと思いプレッシャーになりましたし、原爆で被害に遭った人たちの事を私もちゃんと伝えなくてはと思いました。」

●麻生久美子:「これまで10年ちょっと女優をやらせて頂いてきた中で、初めてこの役はどうしてもやりたいと思えるものでした。演じるにあたり、乗り越えなくてはならない壁が沢山ありましたが、その中で一番大切に思っていたのは、被爆した気持ちを理解したいという事です。」
(印象に残っているセリフは?)
「吉沢さんの、「生きとってくれて、ありがとう」というセリフが、私も生きていていいんだという解放された気持ちになり嬉しかったのと、私の「やった、また一人殺せたってちゃんと思うてくれとる?」というセリフが、原爆のせいで死ななくてはならないという気持ちを考えさせられ、印象的でした。」

●吉沢悠:「これだけメッセージ性の強い映画に出演したのは初めてだったので、今日初日を迎えるまでは本当にドキドキしていました。」
(演じるにあたり準備した事は?)
「僕自身が東京出身なので、広島弁で苦労したのですが、それ以上に被爆者である女性を愛する役なので、被爆二世の方からお話を伺って、その時感じた事をどれだけ映画の中で出せるかという部分で苦労しました。」

●中越典子:「ここに入ってくる直前にとても感動してしまって、(感極まって涙)涙が出てしまいました。
日本だけでなく、世界中で数多くの人に見て頂いて、命の尊さなどを感じて貰えたら良いと思います。」
(広島でのロケはいかがでしたか?)
「広島は景観も良く美しい場所でした。原爆ドームを初めて見て強い衝撃を受け、色々な辛い出来事があり、今の穏やかさの力によって、この映画も支えられているのではないかと思いました。」

●藤村志保:「日常感を出そうと思い、映画のセットに実際に私が昔使用していた物を持ち込んだのですが、美術さんがしっかりと当時を再現してくれました。」

●伊崎充則:「この映画に参加できた事は、一生の宝になりました。高校生から大人まで演じ、学ランを着るのは最初どうかと思ったのですが、着てみていけるな、と思いました(笑)」

●内田奈織:「グランドハープというとゴージャスなイメージがあるかと思いますが、この映画の中では心の中で生き続ける大切な誰かを思い出せるオルゴールのような音色にしようと工夫しました。」

●佐々部清監督:「この映画に参加してくれた全スタッフとキャストに感謝します。吉永小百合さんから「どんな戦争にも正義はありません。一人でも多くの方にこの映画を見て頂きたいと思います。」というメッセージも頂きました。」

こうの史代の同名漫画を完全映画化、静かなる感動の人間ドラマが描かれています。
(池田祐里枝)