歌舞伎の舞台作品をHD高性能カメラで撮影し、映画館の最新音響設備で舞台の臨場感をそのままデジタルシネマとして作品におさめた「シネマ歌舞伎」シリーズ。歌舞伎演目の舞謡の代表作である「京鹿子娘二人道成寺」がシネマ歌舞伎の新作としてSKIPシティでワールドプレミアされた。平成中村座のニューヨーク公演など、海外からの注目も高まっている歌舞伎。会場には外国人のお客さんの姿も多くみられた。上映後にはシネマ歌舞伎の発案者である松竹の土田真樹プロデューサーによる作品解説が行われた。

「シネマ歌舞伎」の企画の発端について、「歌舞伎は日本を代表する舞台芸術のひとつ。歌舞伎に限らず舞台には独特の生命感がその空間に宿っている。劇場に行かないと味わえないそのパワーを、映画館の大スクリーンや音響で、技術の進歩によって再現して、多くの方に楽しんでもらいたいというところからスタートしました。」と語る。
歌舞伎観劇ならではのお楽しみ「掛け声」(見せ場などが決まった際に観客が屋号や代数などを叫ぶこと。歌舞伎ならではの舞台への観客参加。)の音声がそのまま映画に収録されこともあるんですか?という質問が会場からあがると、「シネマ歌舞伎はコマ数や、画面のタッチなど通常の映画撮影とは異なる手法で撮影されていて、音声も映画ではノイズが入らないように処理することもあるんですが、シネマ歌舞伎では場内の生の音声をそのまま収録するようにしています。あまりに大きすぎる掛け声は音量を下げる処理をすることもありますが、観客の掛け声が入っていることもあります。声が聞こえてくる方向もまるで大向こうのお客さんから聞こえてくるように再現しているんです。」と土田P。
また、舞台では見ることのできない俳優の表情や息遣い、衣装など細部まではっきりとクリアな映像で味わえるのもこのシネマ歌舞伎の魅力のひとつ。海外のお客さんからは「映像があまりにクリアで美しすぎるので、女形が男性だということがはっきりわかってしまうほど。」という実に率直な意見もあがった。これに対して土田Pは「確かにおっしゃるとおり。あまりにクリアに撮りすぎないことも必要かと作品によって心がけています。歌舞伎は下は子供から80代まで多くの年代の俳優がいて、80代の俳優が少女を演じることもあるのです。女形さんをいかに美しく撮りシネマ歌舞伎にしていくのかも今後の課題のひとつです。」と。
今後は10月に新橋演舞場で行われる中村勘三郎の演目を山田洋次さんが監督する新作の企画や、海外の映画祭での上映企画など展望も大きく広がっている。クラシカルな演目、子供向けの演目のシネマ化も検討されており、試行錯誤しながら今後もよりよいものへと発展させていきたいと語った。

(Report:綿野かおり)

★7月21日(土)はシネマ歌舞伎『野田版 研辰の討たれ』を上映いたします!