数々の文学賞を受賞し最高傑作との呼び声も高い伊坂幸太郎の『アヒルと鴨のコインロッカー』が映画化され、公開初日を迎えた。

伊坂幸太郎さん自身が絶賛するように、ファンの間からも注目を集めている今作品。初日舞台挨拶には中村監督、出演者の濱田岳さん、瑛太さん、関めぐみさん、田村圭生さん、関暁生さん(ハローバイバイ)、松田龍平さんら、魅力的な出演者たちが登壇した。

【伊坂幸太郎さんから公開初日に向けての言葉】
「映画館で作品を観ていると、時々ですが、最初の数分、ワンシーンが流れただけで『これは傑作かも』と思うことがあります。不思議な事に、その予感は意外に外れません。たぶん、監督や出演者のセンスが滲むのだからではないかと勝手に解釈しています。そしてこの『アヒルと鴨のコインロッカー』の試写の時、最初に写る書店のブックの看板の映像を見て、流れるディランを聞きながら『あぁ、これはすごくいい映画に違いないな。』と感じました。観終われば実際にその通りでした。救われないけど、救われるような不思議な映画です。誰かの大事な映画になってくれればいいなと願っています。」

【映画を観終わった観客を前にして】
中村監督「全部合わせると10回ぐらい舞台挨拶を行ってるんですが、お願いだから上映後に(舞台挨拶を)やらしてくれと言って、やっと今日出来ました。もういくらでも喋れるんですね(笑)。」

【原作者の伊坂さん自身、映画化は難しいだろうと発言されていた事に関して】
中村監督「原作の小説について、あるトリックの部分に注目して読んではいて、実際にその時には『おおっ』と思いました。原作は2年前と現在が交互に進んでいくんですが、その合間の部分が小説では描かれていなくて想像する事しか出来ない。その部分を、瑛太くんが出ているあのワンシーンだけですが、映画では映像にしました。」

【演じる上で大切にした事・感想】
濱田さん「えっと、なるべく普段通りというか・・・《会場笑》。う〜んと、あんま特に無くて普段通りでいる事を心がけました。だから映画を観てそれぞれ僕の役の印象はあると思うんですが、僕はそのまんまというか。」

瑛太さん「演じる役の人間でいることを心がけました。メイクをしたり洋服とかで人は気分変わったりするじゃないですか。だから僕も『あぁこの役だ』と。大事にしたのは“なり切る”ってことですかね。」

関めぐみさん「琴美は目の前の物事に一生懸命な子だなと、撮影に入る前に印象を受けたので・・・だからどうって事はないんですけど(笑)。一生懸命いる事で演じきれたかなと。」

田村さん「今まで映画の内容を話せなかったので、舞台挨拶でストーリーについて聞かれた時もどう答えて良いのか分からなかったんですよ。でも今日は初の上映後の舞台挨拶で、逆に何を言ったらいいのか(笑)。映画を楽しんで頂けたでしょうか?《会場拍手》・・・これでもういいです(笑)。」

関暁生さん「初めまして。ペット殺し役を演じました関です《会場笑》。初めての映画出演で緊張する中、周りの方が色々と助けてくれまして、とても気持ちよく演技ができました。まぁ、演技をしてたのか素に近いのかよくわからないですけども、大変良い経験をさせて頂きました。」

松田さん「大切にした事は特にないんですけど。・・・僕、最後の5日間ぐらいで撮影させて頂いたんですけど、おかげでダレる事無く、楽しく撮影が出来ました。」

【印象に残った事は】
中村監督「今日テレビのインタビューで瑛太くんも言ってたんですけど、動物園のシーンで、瑛太くんの台詞に龍平くんが『マジで!?』と言ったのが嬉しかったんですよ(笑)。瑛太くんと仲の良い龍平くんが自然にいったこの一言が嬉しかったんです。」

【最後に一言】
中村監督「口コミは大いに結構なんですが、映画のトリックについてはあんまり書かないで下さい。ペット殺しの関暁生についてはどんどん書いてください《会場笑》。」

原作者の伊坂さん、監督、出演者が皆、客観的に見てもこの映画は面白いと評価していたのが印象的。

監督・出演者たちは、出来るだけ観客に新鮮な気持ちで観てもらおうと、内容について話すことが出来ず、だいぶ苦労をされた様子。

今回は上映後という事もあって、のびのびと作品の内容について話していましたが、作品をこれから観る方の為に内容に触れる部分は少し変えさせて頂きます。

◆2007年6月23日恵比寿ガーデンシネマにて

(Report:Tomoe Yuita)