『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』で、『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟やハリウッドのクリエーターたちに多大な影響を与え、ジャパニメーションの原点を切り開いたともいえる士郎正宗の原作を、世界初の3Dライブアニメ超大作として映画化し、多くの話題を呼んだ『アップルシード』。今回さらにバージョンアップした映像美と一流のアーティストたちとのコラボレーションによって新生する映画『エクスマキナ』がいよいよ完成間近だ。

前作から続投する荒牧伸治監督を強力にバックアップするクリエーターのメンバーの豪華さにまず圧倒される。プロデューサーに香港出身のハリウッド監督ジョン・ウーが名乗りを上げ、ウー節の効いたドラマティックなアクション描写を注入。音楽監修には日本を代表する音楽家である細野晴臣があたり、細野の呼びかけでテイ・トウワ、rei harakami、m-floなど錚々たるアーティスト11組の楽曲提供によってまた『エクスマキナ』の作品世界を描いている。細野自身も坂本龍一、高橋幸宏とともにYMOの進化形である新ユニット“HASYMO(ハシモ)”として14年ぶりとなる新曲を書き下ろしている。そして、衣裳デザインにイタリアを代表するファッションブランドPRADAのデザイナーであるミウッチャ・プラダが参加。ミウッチャが映画のために衣裳をデザインするのは世界初。
また、先ごろ全世界の販売権をワーナーが獲得したことが発表され、全世界90カ国にわたる同社のビジネス拠点への流通が期待されており今後の世界的な規模での展開も注目される。

南青山のPRADAで開かれたプレミアム記者会見には、同作品の最後の仕上げを抜け出してきたという荒牧監督をはじめ、プロデューサーのジョン・ウーの代理として参加したテレンス・チャン、細野晴臣、ミウッチャ・プラダの代理であるトマソ・ガッリが登壇した。

ビデオコメントを寄せたジョン・ウーは「思い描いたことが何でも可能になるということに非常に驚いた。『エクスマキナ』は夢のような映画。」だと3Dアニメへの参加の意気込みを語り、画コンテ作業にも加わり、愛情の表現についてアイデアを出すなど意欲的に作品に参加したという。荒牧監督自身も香港まで足を運び実際にウーとコミュニケーションをとりながら作業を進めたという。

また、『アップルシード』公開時は初日に劇場に並んだという細野晴臣は「大好きな作品なので、楽しい気持ちで参加しました。けれどやればやるほど大変でもありました。エッジをきかせた面白い音楽になったと思います。予想以上に音楽が画面に溶け込んでいて僕自身がドキドキするものになりました。完成が本当に楽しみ」とワクワクした様子で語る。

プラダグループのコミュニケーション・ディレクターであるトマソ・ガッリはミウッチャ・プラダの衣裳デザイン参加について「エッジでクールでイノベーティブな映画です。これはプラダのDNAにも通じることで、このようにファッションとアニメーションのコラボレートし、新規に物事を起こしていくのがプラダなのです。」と映画の世界観への共感とプラダの企業理念のリンクを明かした。

この強力なコラボレート陣を束ねる大役をまかせられた荒牧監督の苦労は想像に難くない。「苦労といえばすえてが日々苦労ですが、その苦労を楽しんでやっています。」前作の評価の高さと期待が支えとなっていると語る。また出来上がりについても、「コンピューターグラフィックなどの技術は日々進化しているので前作よりパワーアップしているのはもちろんですが、『アップルシード』のデータは一度すべて捨てリセットしたところから『エクスマキナ』を作り上げています。作品が出来上がるにしたがって一度データをリセットした意味を自分自身ひしひしと感じている。『エクスマキナ』ではキャラクターが考え行動している姿が本当に「いる」と感じられる出来栄え。」と強い手ごたえを感じている様子。
「ジョン・ウーさんがプロデューサーとして参加してくれることが2年前に決定した時はすごく驚きました。その後、細野さんやプラダの参加も決まって、自分としては凄すぎてなんだか感覚が麻痺してしまう思いでしたが、とにかく自分がやらなければならないことはすべてのパワーを作品に込めるだけ。今日じかにみなさんの話を聞くことができて、かえって緊張してきた。でも作品の完成までは本当にあと少し。最後のコーナーを曲がったところ。スタッフも本当に自分が思った以上にがんばってくれているんです。みんなの力が前向きに集まってよい作品になると信じています!」

それぞれの作り手が高揚感、ワクワク感を体感しながら『エクスマキナ』のもとに競演したこの作品がどのように実を結ぶのか、完成に期待が高まる。

(Report:綿野かおり)