『レオン』、『フィフスエレメント』のリュック・ベッソンが脚本・監督を手掛けたライブアクションと3Dアニメーション融合の世界『アーサーとミニモイの不思議な国』はフランスで600万人という動員を記録した話題作。9月の日本公開に先駆け、来日記者会見が開催され、リュックベッソン自ら撮影秘話を明かした。

日本が『アーサーとミニモイの不思議な国』のプロモーションの最後であり、30回目の記者会見「来日する度に楽しくて、リスペクトされていると感じるし、愛情を持って受け入れてくれる。今日皆様と一緒に終えることをうれしく思います。」と話した。
取材陣に交じって、一際目立っていたのは劇中のミニモイを感じさせる子供ダンサーたち。ダンスシーンも見どころの一つである本作だが、「次回作にダンサーとして出演できませんか?」とアピールすると、ベッソン監督は「残念ながら次回作にダンスシーンはないんだ。オフィスに写真を送ってくれたら、ミニモイのキャラクターとして出演できるか考えてみるよ」と答え、子供たちを喜ばせた。
自然を大切にしている監督は、「日本の文化など全てを愛しているが、捕鯨はやめてほしい。」と最後にメッセージを投げかけた。

◆質疑応答◆
Q:ライブアクションと3Dアニメーションの融合をなぜ映画にしようとしたのか?
私の場合、まずストーリーありきなんです。今回は10歳のアーサーの物語を作りたかったのです。彼がおじいさんの残した言葉に従い、身長が2mmになってしまうので、少年をどう撮ろうかを考え、ビジョンを形にするためにCGを用いました。このようなことは今に始まったことではなく、『グラン・ブルー』製作時にも、“水中に降りていく”と脚本に描いてはみたものの、どう映像化すればいいか分かりませんでした。エンジニアと話し合いを重ね、新しくカメラを作り、撮影をすることができたのです。

Q:マドンナやボイス・キャストのキャスティングについて
どの言語もキャスティング方法は同じで一番合った声を持っている方にお願いしています。マドンナとは20年来の知り合いであり、ご本人がクイーンなので演じることは容易いことです。映画の最後まで観客がマドンナの声だと気付かない、それほど彼女のパフォーマンスが良かったといえます。今のところ29ヶ国語で製作していますが、どれも素晴らしいものになっています。日本語吹き替え版のレコーディング風景も見ていますが、素晴らしいものになりそうなので、みなさんも楽しみにしていてください。

Q:アーサーのキャラクターを作る上で、監督の体験談は盛り込まれているのか?
今回は私の10歳の頃、60年代の記憶をかなり投影しています。『ジャンヌ・ダルク』では14世紀の19歳のヒロインを、『フィフス・エレメント』では23世紀を描いているので、自分の経験からは使えませんでした。記憶は残ってはいますが鮮明ではないということで、母を招いて過去のことを話し、その中から面白い話が出てきました。鮮明に覚えていたのはどんな秘密も守ってくれたベストフレンドの犬の存在です。だからアーサーは犬と仲が良いのです。多くの人が経験しているように、私の両親も忙しく、祖父や祖母と一緒に過ごし淋しい思いをしていました。また、当時はネットやテレビなどはなかったので、遊ぶためには発明しなければならなかった。板切れを見つけたら、それで何時間も遊んでいました。子供時代は、より自然と近かったことも反映しています。現代は人と自然とのリンクが壊れかかっているのではないか?そういうことを子どもに伝えたいと思って作った作品です。自然のサークルの一部なんですね。そこからはみだしたら生き延びるのは難しいということを子供たちに理解してもらわなければならないと思いました。

Q:工夫や苦労した点、気に入っている背景は?
観客にミニモイをリアルに信じてほしかったのです。花は半分が実写で半分がCGです。非常に大きなセットを組み100人の手で9ヶ月かけて300軒の家を作り、実写と映像を組み合わせました。このモデルはパリで展覧会をして子供たちに大変人気がありました。一番気に入っているシーンはお花の中で眠るシーンで、本当に気持ちよさそうなので、自分も2mmになって眠りながら太陽の差し込む様を見てみたいと思いました。

Q:ミニモイたちのダンスシーンが非常にリアルでかっこよかったが、こだわりについて教えてください
今回の脚本を執筆しているときは、自分がミニモイになった気持ちで書きました。その時、昔のレコードを見て最高のダンスフロアになるなと思い、クラブで踊るシーンを作りました。ダンスはもちろん振付師と作っていきましたが、まず音楽があり、その音楽に合わせるダンスをしています。

Q:監督は以前から10作で引退すると言っていましたが。今回がまさに10作品目です。引退するのでしょうか、続ける思い、続編2作品は見られるんじゃないかと思うんですが。
続編の製作には3週間後に入る予定なんですが、「助監督に今なぜ日本にいるんですか?」と言われています。「いいじゃないか、一週間君が王様なんだから。」と答えました。まず原作が4冊あり、3部作で描きたいと思っていても、まずは一本目が気に入っていただけるように願うしかありませんでした。10本目で引退するという気持ちは今も変わっていません。

Q:壮大なストーリーのアイディアはどこからくるのか?
若い頃はテレビもネットもなく、いまだにコンピュータもメールもやっていません。テクノロジーが身の回りに無いことを自由に感じています。自分の想像力は機能しているし、想像力で遊ぶことはできる。言ってみれば筋肉のようなもの。毎朝ペンに向かい自分と向き合うことであり、そこにミステリーはありません。五感を使えることに感謝し、視覚、聴覚、嗅覚などで、温かさや春の訪れを感じることは大事だと思うんです。

(Report:M.NIBE)