歌舞伎の代表的な演目である「真景累ヶ淵」(しんけいかさねがふち)を題材に、死してもなお愛する男を思い続ける究極の愛の世界を『リング』シリーズで世界を震撼させた中田秀夫監督が描く究極のエンタテインメント『怪談』の完成披露試写会が恵比寿ガーデンホールにて開かれ監督ほか出演者たちが舞台挨拶をおこなった。
たぐいまれなる美貌で美女たちを次々と虜にしてゆく主人公・新吉を演じた尾上菊之助をはじめ、新吉を深く愛するがゆえ幽霊になって彼に近づく女性たちを次々と呪い殺してゆく豊志賀(とよしが)役の黒木瞳や、麻生久美子、井上真央、木村多江、瀬戸朝香らそうそうたるメンバーが日本が誇る伝統美である着物に身をつつんで舞台挨拶に登場。

今回が映画初主演となる尾上菊之助は、
「親の因果が子に報い・・・という一節は歌舞伎や古典ではよく取りあげられている題材。デジタル社会の現代ではなかなかこうした“宿業(しゅくごう)”といったものを感じられなくなっているかもしれませんね。DNAを揺さぶり、人間のもつ情や業といったものをおしつけがましくなくエンターテイメントと仕上がっている。」と作品の出来上がりに自信満々で太鼓判を押した。
また、かなりの女たらしである新吉という役柄について「ふだんモテない私がキレイな女優さんたちに囲まれて幸せでした。新吉は男からしても嫌な男です。でもそのお陰でいい思いができました。」と冗談ぽく笑う。
そんな新吉を幽霊になってまで強い思いで束縛し愛しぬくヒロインを演じた黒木は、中田監督とは主演作『仄暗い水の底から』で2作目のタッグとなる。
「中田監督との2度目の出逢いのこの作品を、今日この場で世に送り出すことができていますごくハッピーな気持ちです。みなさん恐かったですか〜?」と笑顔で誇らしげに挨拶した。
新吉を愛し恋の業火に身を焦がす美女として登場する井上真央、麻生久美子、木村多江、瀬戸朝香からは映画の愛について語ることで4者4様のそれぞれの恋愛観が垣間見ることができた。
井上真央「愛するが故に憎いという気持ちがこの作品では描かれていて、年齢的にまだそんな恋愛経験がない私にはピンとはきませんが、愛についてすごく考えさせられました。」
麻生久美子「演技なんですけど、新吉に冷たくされてると本当につらくなってしまって。こんなに冷たくされても好きでいるって凄いなあ、わたしは自分を愛してくれる人じゃないとダメですね。」
木村多江「わたしの演じた役は、新吉を好きだけどあえて好きといわない。いえないんじゃなくて言わない強さを感じました。献身的で母性愛に満ちた愛を学ぶことができました。」
瀬戸朝香「4人の中で唯一新吉をだます悪女のような役でした。どうしたら嫌な女になれるか考えて考えてました。監督からは色っぽく!色っぽく!とずっと言われてました(笑)。恐いだけじゃなく愛について考えさせられ色んな想いがめぐる作品です。」

長年温めてきた念願の作品だと語る中田監督は「一瀬プロデューサーと『仄暗い水の底から』の頃から企画していたもので、シナリオは4年くらい前から書いてました。ハリウッドデビューして一番苦しかった時期に台本が出来上がって自分にとってずいぶんそのことが励みになっていましたね。誠心誠意、全力投球して作った作品なので感無量です!」と感極まった表情でひと言ひと言かたっていたのが印象的だ。

(Report:綿野かおり)