6月2日より2週間限定ロードショーで開催されている作家の桜井亜美と乙一による「乙桜学園祭」。人気作家として数々の作品を世に送り出している二人が、今回監督として自ら映像で作品を作り上げたことは作家の熱心な読者でなくとも興味がそそられるだろう。
桜井は著作「イノセント・ワールド」が竹内結子主演で映画化されたり、昨年公開された『虹の女神』では岩井俊二とともに原案・シナリオを担当。また乙一こと安達寛高は、『ZOO』『暗いところで待ち合わせ』『きみにしか聞こえない』など自作の多くがこぞって映画化されており、自身も作家活動のスタートは映画のシナリオを書くことからはじまったというから、彼らが映像を作り始めたことは表現者としてまったく不思議なことではない。
5人の恋人とのデートをダーツゲームで決め、100%の恋愛を避けながらも100%の相手を求めている少女をリリカルに描いた桜井監督の『人魚姫と王子』、別の家族と住む母をたずねて東京という巨大都市をさまよう少女のささやかな冒険譚をなんと3D映像で実験的に描いた安達監督の『立体東京』。偶然にもそれぞれが、東京を舞台に、東京タワーのように自分を照らしてくれる灯台のような存在をさがす少女の姿を描いていることからこの2本のオムニバスは「東京小説」となづけられている。

2週間の上映期間中は桜井・安達両監督はもちろん、メインビジュアルを描いた漫画家の古屋兎丸や、『人魚姫と王子』主演のつぐみ、柏原収史、安達監督と親交の深い作家の滝本竜彦、佐藤友哉などがゲストに登場し連日トークイベントが開催されている。

13日(水)は、両監督に加え、イベント再登場となった滝本竜彦と同じく作家の海猫沢めろんがゲストに登場。インターネット、ゲーム、ひきこもり、コンビニなどトークは縦横無尽に広がりまくる。
『人魚姫と王子』のつぐみ演じる主人公について、「映画の最初とラストで全然キャラかわってるところがいいね!俺はラストに萌えました」(海猫沢)「最初にでてくる5人の恋人たちが悪い。おれがその5人のうちの一人だったらクリーニング屋の男と知り合うまでもなく幸せになってると思う」(滝本)などといいたい放題。
安達監督の『立体東京』で、観客に配られた3Dメガネについても、「家ではメガネかけてるんだけど、この3Dメガネってメガネの前と後ろどっちにすればいいの!?てゆうか立体映画だけど飛び出してないところもあるよね!?」と海猫沢が苦情まじりに安達につめよると、「メガネってツル付のタイプとカード式のタイプがあるんだけれど、カード式のタイプはの裏側に貼り付けるようにしてみるといいですよ」といかにもメガネ男子らしい正しい3Dメガネのレクチャーがはじまる。3Dに関しては「飛び出すというよりは奥行きを出す感じにしたかった」と安達が語ると、すかさず桜井が「わかる!乙一さんてハコ的なものがすきなのよね。箱庭っぽい感じ」とするどい指摘をみせる。滝本が「オタクっぽいですね!箱男!?」と重ねると海猫沢が「滝本さんには言われたくないんじゃない?」とつっこむ。あまりの4者4様ぶりに大爆笑のイベントとなった。
2人の作家が一番新しい表現である映画というフィールドに挑戦した映像作品がみれるばかりか、こんな愉快なトークイベントまで聞けてしまう。また、校則や校歌など生徒手帳に模した学園祭公式パンフレットまで用意されているお祭りぶり。
乙桜学園祭は残りあと2日。まだの人はおいそぎを!

■公式サイト
http://www.biotide-films.com/otsuzakura/

(Report:綿野かおり)