昨年のカンヌ国際映画祭に出品され、また世界各国を驚嘆させ、笑いと涙で包んだ話題作『ショートバス』が今夏、遂に日本で公開となる。監督は『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のジョン・キャメロン・ミッチェル。“セックス”という表現方法による自己のアイデンティティや人とのつながり、愛を求めてさまよう7人の男女の物語が我々に本当の愛を問いかける。

6月4日、2001年の『ヘドウィグ』以来の来日となるジョン・キャメロン・ミッチェル監督と主演女優スックイン・リーによる来日記者会見が都内にて行われた。
最新作に『ショートバス』を選んだ理由について、監督は「私は常々“セックス”が映画の中でちゃんと扱われていない、それを見たこともない形で描きたいと考えていました。まず役者が役に慣れるために、役者と一緒に脚本を描くことを考えました。面白いキャスト選びに始まり、二年半をかけて即興を交えながら作り上げていったのです。セックスは一言では表せません。今までのセックスの映画での描かれ方はポルノや少年のジョーク、アートフィルムなど、二度とセックスしたくなくなるようなものでした。その間に話し合える言語の使い方があるんじゃないかと思い、『ヘドウィグ』で音楽を使ったように、この映画でセックスを使いたいと思いました。」と語った。
『ヘドウィグ』にも参加しているスックリン・リーは今作品に参加するきっかけについて、「『ヘドウィグ』の現場や作品を通して、いかにすばらしい映画作家であるかを経験したことに起因しています。彼と仲のいい友人になり、次の作品にはぜひ参加したいとお願いしたところ、ある日電話をもらってアイディアを教えてもらいました。そんなことするの?という感じでしたが、このテーマを表現できるのは監督しかいないという気持ちと自分の好奇心もありました。大きなアドベンチャーになるのではないかと思いオーディションを受け、実際やってほしいと言ってもらえました。(やったー!)と思ったと同時に、(どうしよう?参加して)とも思いました」。

Q.アニメを担当したジョン・ベアについて。
監督:彼は素晴らしい人で作品を見せてもらって、多くのコラボレーターと同じで優秀な人です。楽しいこと、見たことがないことをやってほしいと依頼しました。これが『ショートバス』をすべて象徴しています。お互いのサポートやリスペクトすることを観客にも伝えたい。サントラも同じで役者も参加して歌っています。

Q.モザイクをかけなければいけないことについて
監督:当然残念なことですが日本で見ていただくためには仕方がありません。子どもであれば理解できますが、大人であるのにフィルターをかけるのは古い考えだと思います。韓国では禁止にされました。最初のシーンはショッキングかもしれませんが、モザイクがあってもなくても何が起きているかわかります。メタファーや意味があるレベルで理解されていることには満足しています。

Q.日本でどんな風に受け入れられたいと思いますか?
監督:この映画は色んな文化の不安やストレスをとってくれるかもしれません。どうして我々はこんな体位になって、急にこんな逆さまになっているんだろうということがあります。それは矛盾などの人間的なものをよく表しています。実際この映画は万人に理解できるものだと信じています。リアルな描写、親しみがあり、おかしな楽しめるスィートなものでもあります。思い出してほしいのは我々の人生の中でのセックスの扱い、喜びやユーモアがあったり、同時に退屈だったり友情もあったり。それは人生と変わらない。人生とつながってほしいと思うのと同時にチャンスを与えてほしい。『ヘドウィグ』と同じように好きになってほしい。セックスは悪いことではなく学ぶことがあるのです。

Q.9.11はこの作品にどんな影響を及ぼしていますか?
確実にその影響はありました。この映画は私の反応といえます。NYにはネガティブな空気が漂っていて、みんな力不足だったり、感情を出せなかったりする状況があります。それを払拭して自分でもできるという希望を広げていければと思っています。小さな治療、薬のように見て欲しい。私たちは皆、知らないものに対する恐怖を持っています。ニューヨークの停電があったとき、死ぬかもしれない、攻撃されるかもしれないと思いました。でもそれはただの電力の使い過ぎであったに気付きました。電気が全く使えなくなり、人間と人間がロウソクの炎でお互いに対峙せざるを得なかったあの24時間が平和な瞬間であったと思います。毎年停電が起きるべきだと思うぐらいです。

(Report:M.NIBE)