マイケルムーアの新作「シッコ」が世界で始めて公開された。今回のテーマはアメリカの医療制度に関して。保険に入っていない人、また、入っているのに治療を拒否される人、そういう人たちがなぜそのような事態に なっているのかを保険会社と病院の内部告発に基づいて描かれ、なぜアメリカの医療制度がこんなによくないかを暴く。
例えば、事故で指をなくした人が、病院に行ったが保険がないので多額の医療費を請求され、2本のうち1本しか元に戻すことができなかった話や、緊急で運ばれた病人が保険に入っていないという理由で投げだされたところを隠しカメラで捉え、アメリカの医療現場がどんな事態になっているのかを映している。
また、40度の高熱を出した乳幼児が、保険に入っていないという理由で治療を受けられないという実体など涙をそそる場面も。
キューバを始めフランス、イギリス、カナダなど世界各国で取材し、それと比べてアメリカの医療制度がいかに悪いかを皮肉を交えてムーア得意の筆致でユーモラスに描いている。

<スクリーニングを観た人のヒアリングより>
■カンヌでの上映での反応
場内は笑いがおこったかと思うと、涙を流すことも。
非常に好評のうちに終了した。

<記者会見>
Q.キューバに入ったことによりアメリカ政府から勧告を受けていますね。あなたはキューバに密入国したのですか?」
ムーア「NO」

Q.アメリカ政府から調査の対象になっているとか?
ムーア「Yes。10日前にアメリカ政府より通告を受けて、来週までに財務省にキューバで何をしたかを報告しなければならない。昨年10月にはちゃんと申請をしてからキューバには入ったのに、なぜカンヌ前にこんなことになったんだ?政府からは、違法な行為により映画が撮られているのであれば映画の公開自体の中止、公開延期などの事態に陥る可能性がある。もしくは僕に、罰金や禁固刑といった刑罰が下る可能性もある。
キューバへ911の救命士を連れて行った。なぜならグアンタナモの基地にいるアルカイダの犯人たちは彼らよりいい治療を受けているんだ。911の救命士たちは再起不能の人がたくさんいる。彼らにそこの治療を受けさせてやりたかった。

ムーア「医療に関する映画を撮るにあたって、自分自身が健康にならなくてはと、ダイエットをした。2ケ月で25ポンドだ。痩せて気分がいいよ。ミシガンでは細いほうだよ」
ムーア「実はコンペにでるはずだったが、降りたんだ。華氏911でパルムドールもとったし、十分だと思っている。次も、次もと賞をねらうなんていかにもアメリカ人らしい行為だと思う。」
★今回のテーマに関して
「なぜアメリカ人はそうなったか、「華氏911」でブッシュ政権を「ボーリング・フォー・コロンバイン」銃問題を通して描いたが、今回の医療制度に関しては、特に、映画を観た人に、こんな制度を変えなくてはならないと、今度こそ立ち上がって欲しい」 と熱く語って会見は終了した。