父も母も、お金もテレビも電話もない。ないないづくしでがんばりたくてもがんばれない15歳の少女、初子のささやかな希望を描いた映画『赤い文化住宅の初子』が初日を迎え、主演の東亜優、塩谷瞬、佐野和真、浅田美代子、原作者の松田洋子、タナダユキ監督が渋谷シネ・アミューズにて舞台挨拶を行った。

同名コミックの作者、松田洋子はできあがった映画の感想について、「魔法?みたいな気持ちで、書いたキャラが全部それぞれハマっていたので、二次元で書いたものが三次元で動いていてしゃべっているというのがものすごく不思議というのがあって、面白い。しかもタダで(笑)。金を払わされるんじゃないかってドキドキしていました。これで原作料ももらえるんで(笑)。ありがとうございます。」(会場笑)。

ヒロイン初子に大抜擢されたのは、第29回ホリポロスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞し、宮藤官九郎脚本のドラマ「吾輩は主婦である」では斉藤由貴の娘役を演じた東亜優(ひがし・あゆ)。撮影時にスタッフ、キャストからハマリ役と絶賛され、原作者の松田も「かわいすぎます。こんなアイドルのようなかわいい子があんな泥臭い田舎の少女を、と思ったんですけど、目つきがやっぱりそっくりだったんで。言っちゃなんですけど、すごい貧乏人の役がピッタリ合っているのが、さすが女優と思いました。」(会場笑)。
 初子の兄、克人を演じたのは『パッチギ!』での好演も記憶に新しい塩谷瞬。「この作品は企画の段階からやりたかった作品で、楽しみにしていたんですけど、撮影も変な緊張感なしにスッと入っていって。タナダ監督と少し話してからすぐの撮影で、すぐOKが出て。もっともっと撮りたいと思ったんですが、一日一日があっという間に過ぎていきました。この作品に参加できたことをうれしく思っています。」と感慨深げに語った。松田も「塩谷さんは、怒っている芝居が本当にこわくて、本当に田舎のヤンキーじゃないかと思いました。」と絶賛。
初子のボーイフレンドを演じた佐野和真は、「三島くん役の佐野和真です。」と、たくさんの観客を前にして緊張し自分の役名に“くん”をつけ、周りからつっこまれ、苦笑い。東いわく“場を和ませるいいキャラ”はここでも健在。撮影では夏の暑い日に冬服で走ってダウンしたこともあったそうだ。
 
東から「本当に好きです。働いている姿がすごく素敵でした。」と信頼されるタナダ監督は、「そんなに明るい話ではないんですけど、いろいろと楽しみ方があると思います。この作品を見て面白かった方は“面白かったので是非劇場で見てください、面白くなかった方は、”面白くなかったので是非劇場で確かめてください“といっていただければ」と話し、終始笑いの絶えない舞台挨拶の最後を締めくくった。
(Report:M.NIBE)