第二次世界大戦末期、特別攻撃隊の編成により多くの尊い若者の命が失われた。そんな特攻隊員の彼らの心を慈悲の心で支えた”特攻の母”こと鳥濱トメさんの視点から描かれた戦争群像劇『俺は、君のためにこそ死ににいく』の完成披露試写会が、2007年4月24日に東京国際フォーラムにて行われた。
舞台挨拶には、徳重聡、窪塚洋介、岸恵子、筒井道隆、中越典子、勝野洋、多部未華子、新城卓監督、原作・製作総指揮・脚本の石原慎太郎が登壇した。鳥濱トメさんの命日は4月21日であり、今回の舞台はトメさんに捧げられるもので、後方に専用の席が設けられ、親族など縁の深い方々も故郷から集まった。

石原:今回の企画は、名前は変えましたが全てトメさんから直接聞いた話です。トメさんは本当に素晴らしい語り部でした。亡くなった後も色々とトメさんの話を聞き、何か形に残したいと思い本にしたところ監督から声をかけられ映画化に至りました。私はこんなに凄いトメさんに、是非国民栄誉賞をあげて下さいと宮沢元内閣総理大臣に頼んだけれど、断られまして、きっとのバチが当たるぞなんて思ってしまいましたけどね。この映画が皆さんに報いることができれば幸いです。

徳重:僕はこの映画の中に特攻という事実があると思います。この事実を皆さんに見て頂いて、特攻兵の皆さんがいたから、そして特攻兵を支えた人がいたから、あの時代を生きた人がいたから平和な日本があるのだと感じて欲しいと思います。

窪塚:この映画は、今を生きる僕らの価値観や考え方が全く通用しない、まさに時代劇と言っても過言ではないくらい時代の違いを感じると思いますが、六十数年前に実際にこういうことがあったのだと、トメさんを初め特攻隊員の皆さんのそれぞれの命を生き抜いた時代があったのだということを見て頂いた後、皆さんそれぞれ色持つ色々な感情を大切にして、この映画を完成させて頂ければと思います。

新城監督:沖縄に生まれ18の時にアメリカの軍政下の下でパスポートを持って上京しました。その時に、家族を守るため、国のため、軍のために戦った特攻隊に対していつの日か感謝の誠を捧げたいと思いました。石原さんの彼らに対する気持ちを聞いて映画化に至り感無量です。この作品を、是非若い人に観てほしいです。新城卓、全人生をかけて作りました。

岸:この映画は、本当に素晴らしかったトメさんに対する鎮魂歌です。戦争は皆ひどいものです。私は心から戦争反対の気持ちでこの映画に参加いたしました。この映画に出演させて頂いた経緯をお話すると、私は出演者の中では第二次世界大戦末期の日本を知る唯一の人間なのです。実は私は、昭和20年5月21日に横浜で大空襲にあいました。志願という名の命令で行かなくてはならなかった何千もの隊員を最後まで無償の愛で支えたトメさんをまごころをこめて演じさせて頂きました。人間がいる限り戦争というのは起こってしまうものですが、せめて負けるとわかっていても国家のプライドとして尊い命が失われていくことは二度とあってはならないと思います。日本の若い人達、そして世界の人達にも観て知って欲しいと思います。
(池田祐里枝)