2007年4月21日、公開初日を迎えた『星影のワルツ』の舞台挨拶がシネマライズにて行われ、主人公の祖父役・喜味こいしさん、主人公の山口信人さん、脚本・撮影も手がけた若木信吾監督が登壇した。

公開から1週間はレイトショーでの上映となる為、今回の初日舞台挨拶も夜に行われたが、公開を待ちに待っていた20代後半から30代を中心に観客が多く集まっていた。

本年で80歳になる喜味師匠。「役作りしてまへんけど、お祖父さんに似てたという事でお誘いを受けました。監督のお父さんとお母さんも『似てる似てる。』とおっしゃっていて、(自分と)同じ人がこの世に2人いると言いますからね。」とはっきり通る声で挨拶をし、全く年齢を感じさせない話し方は話し手のプロを感じさせた。

一方、普段は制作側で本格的な映画出演は初となる山口さんは「えっと、緊張してます。僕は映画とか出るのは違うと思います(笑)。」と前置きし、「普遍的なテーマが描かれていると思うので、共感が出来ると思います。楽しんでください。」と比較的か細い声で挨拶した。繊細な心が伺え、喜味師匠とはまた違った魅力を放っていた。

そして、この作品の完成を誰よりも待ちわびていたであろう若木監督。「足腰が悪くなった祖父は、よく“星影のワルツ”を歌ってくれました。当時はビデオとか無く(形として残せなかったので)、もう1度あの場面を見たいと思ったのか映画を作るきっかけでした。」と映画に対する思いを述べた。

【映画の撮影の中で大変だったところは?】
喜味師匠
「砂丘を歩くシーンですね。パンフレットにも写っている砂丘のシーンですが、歩く方向間違ったりして本当に大変でした。」
山口さん
「僕も砂丘のシーンです。おじいちゃんの手を引いて目的地まで運んであげるんですが、壮絶でした(笑)。」

【映画の見所は?】
喜味師匠
「お笑いはオーバーにやるもんですが、映画では普通つまり自然体でいなければいけなかったところが難しかったです。兄が亡くなって漫才をする機会が無くなりましたが、“おいなにしてる”という台詞が“おいなにしてるん”になってしまいました。映画で直ってるかどうか、皆さんに判断して欲しいです(笑)。」
山口さん
「おじいちゃんが一人のシーンです、便りを見たり、絵を描いたりしているシーンがとても素敵です。」

最後に映画について「この映画自体が奇跡みたいなもので、自分の知ってる人が出演して映像で見れたことが嬉しい。」と、作り手でありながら一番完成を待ちわびていた観客でもある若木監督は、映画の完成を心から喜んでいた。

舞台挨拶が終了を迎える頃、喜味師匠はマイクを持って「出ている役者はみんな下手です。(作品として仕上げた)監督に拍手です。」と自らを下げ監督の才能を強く讃え、若木監督に拍手を送った。

フィクションでも無く、ノンフィクションでも無い。限りなくドキュメントに近いこの作品の今後を期待したい。

(ユイタ)