内野聖陽と中谷美紀が描く江戸の家族愛を描いた『あかね空』のプレミア会見と舞台挨拶が行われました。映画史上初の試みとなる江戸東京博物館を会場とし、巨大な日本橋模型の上で会見が行われました。橋の上に現れたのは中谷美紀、内野聖陽、浜本正機監督、原作者の山本一力。

内野「本当にすばらしい原作で。家族はとても大事な世界を越えていく砦なのだという力強いメッセージを感じました。」

中谷「18歳から37歳までを演じました。ちょっと無理があったかなとも思うんですけれども(笑)女優やめたらお豆腐屋さんなりたいなと思うくらいお豆腐屋さんの修行が楽しかったです。」

MC:迫力のある夫婦喧嘩のシーンが見ものですよね。あの撮影の後の様子は…?

内野「非常に寂しくなりましたね。中谷さんということを忘れ、僕も内野ということを忘れて栄吉として怒られていましたから。本当に喧嘩していましたね。」

中谷「なかなかあそこまで感情をストレートに出す機会がなくて気持ちいい半面、中々上手くいかないで繰り返しているうち脳みその血管切れるんじゃないかって。」

記者:原作者からみてこの作品をどうとらえていますか?

山本「このあいだ内野さんと雑誌の対談でお会いしました。真の役者というのは与えられた役になりきった顔と普段の顔というのはこれだけ違うんだと目の当たりにして本当に深い感銘を受けました。原作者というのは全く関係なしに一人の観客として映画を存分に楽しんでいます。」

中谷「便利でないぶん、お豆腐を作る光景も暮らしも時間をかけてかかります。そうして時間をかけてはぐくまれた家族の相性であるとか夫婦間の絆であるとかこの映画を通して感じていただければいいなと思います。」

橋の上での会見が終われば、いよいよ観客の前で行われる舞台挨拶です。
江戸東京博物館副館長の挨拶が終わると観客は拍手の中キャストとスタッフを迎えました。新たに企画と脚本と担当した篠田正浩が登壇しました。

篠田「(原作は)町人は頼りは家族だけ。自分達だけで生きていかなければならない。人間の原型が家族にあるということを改めて教える深い力を持った小説です。私のスタッフを集めてこの映画作ってくれと頼みました。浜本君は奇天烈な格好をしていますが私の10倍くらい人情深い人間です。彼は『あかね空』を作るのに大丈夫なんじゃないかと。その結果は山本一力さんにお尋ねしたいと思います。」

山本「すばらしい映画です。今回は素晴らしい二人の役者さんが主役をはられてそれをまとめた監督はすばらしい映画をさせました。物書きとしてこれ以上の冥利はありません。」

MC:役柄とリンクするところはありますか?

内野「豆腐の味を守るためにこだわって豆腐を作っている男の話なんです。そういう意味で頑固一徹のキャラクターなんです。僕も俳優として『お客さんにこういうものを見せたい』という信念を持って作っています。そういうところは似ていますね」

中谷「おふみは本当に素直な人であんまり人を疑ったりしないタイプの人ですけれども、私はちょっと疑深いので(笑)思いこみが激しくて人のことを思うがゆえにやりすぎてしまうところ、そういう気持ちは自分の中にもあるかもしれないなと思います。」

浜本監督「豆腐は形状や作り方が変わっていないんです。皆様がご覧になる映画は時代物です。ただそれだけじゃなく、人の営みはその当時も今も変わらないと思います。」

浜本監督の瞼が熱くなっているように見えたのはわたしだけではないはずです。
現代に伝えたい良き時代があり会場をも博物館にした意気込み。観客がどっぷりと映画の世界観を味わえる舞台挨拶となりました。

(hiromi kato)