ハンニバルの記憶の宮殿をイメージした会場に、バッハの「ゴールドベルク変奏曲」が流れる中、テオドール・ジェリコーやウィリアム・ブレイクの絵がスライドで映され、極上のワインやハンニバルの大好物のスィーツ(!?)など、ハンニバルが愛した逸品がおかれた空間となっていた。
このハンニバル・レクターの記憶の宮殿の中で、主演のギャスパー・ウリエル、ピーター・ウェーバー監督、プロデューサーのマーサ・デ・ラウレンティスによる来日記者会見が行われた。

ギャスパー:「今までの私のキャリア最高の会見になりました。ありがとうございます。日本には今まで5回ほど来ているのですが、日本の皆さんが他国の映画に尊厳を持ってくれることに感謝します。」
監督:「初めて日本に来る事が出来て、とてもうれしいです。日本のとてもファンです。特に黒澤監督、小津監督の大ファンです。会場のみなさん、極上のワインと脳スイーツはオイシカッタですか?」
プロデューサー:「我々は、7年前にアンソニー・ホプキンスと『羊たちの沈黙』で、4年前にエドワード・ノートンと『レッド・ドラゴン』で来日しました。今回はギャスパーという新しいスターを紹介する為にまいりました。」

Q:ギャスパーにはちょっと壊れているところがあって、とても合っていたという監督の発言がありますが、どのあたりが合っていると感じましたか?
監督:「ギャスパーは完全にバランスのとれた若者ですよ。でも、彼は普通の人では難しい人の底にあるものを演じられる俳優です。今回の作品にあたっては人間の身体に触れている方がいいと思い、解剖学の授業を受けてもらいました。するとギャスパーはとてもその授業を楽しんだようで、翌日の皮を剥ぐという授業にも行ったんですよ。確かにダークな部分も持っていると思います。」

Q:撮影中はどうでしたか?
ギャスパー:「とても楽しい現場でした。こういう作品では撮影中や俳優は暗くなってしまったりすると思うかもしれませんが、楽しかったです。まるで、ゲームのようでした。血やその他のも本物ではなく、特殊効果の作り物だから。」
プロデューサー:「ギャスパーは本当に好奇心が強くて、細かい事にも好奇心を持っていて、それが演技に深みをもたらしたと思います。子供の好奇心というより大人の好奇心ですね。本当に彼の好奇心が役立ったと思います。」

Q:役と自分の中で共通するところはありますか?
ギャスパー:「ないですね。この役とは自分は全く違う。すべてイマジネーションです。ただ、今までのハンニバルの作品の中では若い分、ナイーブで人間らしさ、つまりこれは家族の為に復讐するというところですが、があると思います。これは重なると思います。」

Q:ハンニバルのもつ美学はどのように解釈しましたか?
ギャスパー:「確かにハンニバルは様々な国や音楽、芸術に興味を持っている。それを知ることはとても楽しかった。原作者のトマス・ハリスは日本の武士道や仁義等をうまく組み込んでいた。武士道のルールというのはハンニバルの考えの中に深く残っていると思う。」

Q:16年かけて作り続けるハンニバルの魅力は?
監督:「過去の作品とは違い、新しいエネルギーを描きだしたのが『ハンニバル・ライジング』です。場所もヨーロッパに移していますし。今までの作品が、心理サスペンス・FBI捜査ものであれば、今回の作品は神話・大人のおとぎ話とでも言えますでしょうか?ゴシックウェスタン復讐ものですね。実は、トマスの新作には、ハンニバルとレディー・ムラサキが日本で出会うというシーンがあるのです。これも皆さんが『ハンニバル・ライジング』を観て、もっと続きが観たいと宣伝して下されば、この後のハンニバルを観る事が出来るようになるかもしれません。」

と次回作の内容まで監督の口から聞く事が出来ました。ハンニバル・レクターが「インテリジェンス」と「人喰い」の魅力に取り付かれる様になった経緯が描かれる、まさに’’ハンニバル・レクター序曲’’ の『ハンニバル・ライジング』をぜひ劇場で、あなたもその誕生の瞬間の目撃者になってください。

(にいざわ あきこ)