1月29日、TFMホールにて映画『となり町戦争』の一般向け試写会が行われ、
主演の江口洋介さん、原田知世さん、渡辺謙作監督が舞台挨拶を行いました。
Q:三崎亜記さんの「となり町戦争」を映画化した経緯について
渡辺監督:プロデューサーから去年の今頃、お話をいただいてまず原作を読んだのですが、一読して「映像化は難しい」と感じました。ちょっと尻込みしてたんですけど、脚本の第一稿があがって、これなら行けるかもしれないと感触を得ることが出来ました。原作の三崎亜記さんも、実は映画に出演いただいているんです。大勢のなかでラムネを飲むシーンなんですが、一緒に出ている集英社の編集者の方が目立ってしまっているので、三崎先生を知っている方が見ても気づかないかもしれません(笑)。
江口洋介:「戦争」とタイトルについていながら、戦争というものが最後の最後まで、映像としてのシーンがないんです。小説を読んだときは、それが小説ならではの面白さと感じていましたが、映画版も違う意味で面白いんです。
映画になったときに少しラブシーンなんかの要素も含めて、「戦争反対」と説教がましくなく楽しみながら受け入れてもらえる映画に仕上がっています。いままでの映画にないオリジナリティがある映画です。
原田知世:私が演じた香西さんという女性は、舞台となった舞坂町に生まれて舞坂町が大好きで、町の役に立つために町役場の職員になった人なんです。舞坂町がとなり町と戦争することになり戦争推進室に配属になるのですが、戦争に対しマイナス感情をいだきつつも、ロボットのように無表情に感情を押し殺して業務を推進する。そうした感情を演じるのに苦労しました。

Q:江口さん、原田さんの初共演について
江口洋介:まったく初めてなんですが、初めてという感じがしませんでした。年が近いということもあるんだと思いますが、いろんな出演作を見ているからですかね。爽やかで、可愛らしくて、ちょっと芯が強くてというイメージだったんですけど、今回映画の中で、今まで見たことのない彼女が見れると思います。
原田知世:そうですね、私も同じで初めての共演とは思えませんでした。
本当に和気あいあいとした現場で、撮影場所は本当に景色がいいところで、のんびりとした気分で撮影に望めました。
渡辺監督:江口さんに関していうと、原作のイメージと違うんです。原作のイメージでは江口さんよりもっと若い(笑)。
江口洋介:聞き捨てならないですね(笑)。
渡辺監督:それで、どう撮るか考えて、もっと能動的で芯があるキャラクターにしました。
原田さんは僕より、原作をしっかり読み込んでて、細部のシーンまでしっかり覚えていました。僕は1〜2回しか読んでいなかったので、まいったなと思って、原田さんにはもうおまかせで演技をしていただきました。

Q:撮影場所について
渡辺監督:みなさん映画の撮影現場をよくご存じないかもしれませんが、ロケに行くとだいたい邪魔モノ扱いされるんですよ。「道をふさぐな」とか。でも、撮影現場の東温市では、市民全員が映画の撮影について知っていただいてました。道をふさいでても、「映画の撮影ね」と10分くらい車の中で平気で待っていてもらったり。普通はエキストラはノーギャラなので時間になると「帰る」ということがあって困ることがよくあるんですが、まったくそういうこともなく、皆さん最後まで芝居までしていただいて本当に助かりました。

Q:撮影現場でのエピソード
江口洋介:下水道を通って脱出するシーンがあるんですが、撮影場所は本当の下水道。本当の下水道なんで何か変なものが浮かんでいたりするんですね。足元はヌルっとするんですが、監督がもっとヌルっと感じでというんで何回も取り直しをして大変でした。そのシーンを見ると匂いとか感触を思い出していやですね。

Q:戦争について
渡辺監督:いろんな要素がミックスした映画なので、その中で自由に感じてほしい。戦争について問題意識をもって見ることも出来ると思う。
江口洋介:実際に日本では戦争を体験したことがある人は少ないと思いますが、映画の中で「業務、業務」というコトバがいっぱい出てくるんです。与えられた日常の業務をこなし、普通に暮らしていたらいつの間にか戦争の中心にいた、という感じになるのです。実際に戦争に面した際も「自分の立場ならどうなのかな」と感じてもらえるような映画だと思う。
原田知世:この映画では、気づかないうちに、主人公はいろんなものに取り込まれてしまう。物語なのでオーバーに描いているところがありますが、この映画に対する私の感想は、いろんなことに敏感でいなければいけないんだなと思いました。

Q:もし実際に映画さながらに、「となり町との戦争を始めます」という通知が2月10日(映画公開日)に届いたらどうしますか。
渡辺監督:映画の公開日なので新宿ガーデンシネマにいくと思います。それと主人が病気になると、ペットも病気になるみたいに、戦争が本当に起こったなら僕も病気になってしまうような気がします。
江口洋介:戦わずにその場を去ると思います。その場にならないと分からないですが。
原田知世:戦争のない町に行きたいと思います。周りの人を誘ったり。どうにかならないかなって相談して力を合わせたりしたいと思います。