その完成度の高さから全米のマスコミに大絶賛され、アカデミー賞有力候補の呼び声高い『ディパーテッド』。本作は2002年に大ヒットを記録した香港映画『インファナル・アフェア』を原点にした”リメイク作品”だが、巨匠マーティン・スコセッシ監督とウィリアム・モナハンの脚本、そしてレオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソンといった名だたる俳優達によってリメイク作品の枠を超えた新たなギャング映画として見事に生まれ変わった。

実はこの映画を作ることに迷いがあった、と監督は語る。「本当はこういった作品は撮りたくないと思ってたんだ。怒りを感じるほど(笑)!だから今も観客と批評家たちの反応に驚きを感じてるよ。でもレオやマット達と一緒に発展させていく中で撮りたいと思うようになったし、結果としては知らなかったことをたくさん学べたんだ。」

マフィアに潜入する警官・ビリー(レオナルド・ディカプリオ)と警察に潜り込んだマフィアの手下・コリン(マット・デイモン)が繰り広げる頭脳戦に目が離せなくなる本作。しかし実際は本編中で2人が一緒になるのは2シーンだけ。「この映画のストーリーは1人の人間の二面性を現している。ビリーもコリンも善悪のどっち側にいる人間なのかハッキリと線を引けないんだ。ただ選択によって彼らは違う道を進んでいるだけ。演じている時はまるで1人のキャラクターを2つに分けて演じているみたいだったし、2つの映画を撮っているような気分にもなったよ。マットとの共通点は監督だけで、撮影中は距離を置いていたんだ。秘密だらけの脚本だったから、相手が何をしているか知らない方が良かったからね!」とレオ。特にビリーという役柄に挑戦するに当たっては、演技の上に演技を重ねるという高度なテクニックを要求された。「本当に難しい役で、俳優としてのジレンマがあったよ。でもジャック・ニコルソン演じるフランクに警察の犬じゃないかと疑われるシーンで、どう演技をすればいいかわかったんだ。」
ジャック・ニコルソンとの共演については『シャイニング』を見て準備したのだそう。「彼とはビリーとフランクの関係そのままだったよ(笑)。間には緊張感が常にあって、予測不可能!ユニークな人で、いろんなことが学べるんだ。映画を作る人間の中に“ハッピーアクシデント”というものがあるんだけど、その世界に住んでる感じ。そういうものを作ろうと演技していて、だからこそ見ていて興奮できるような瞬間が生まれるんだ。」

会見中も親しげに言葉を交わしていた監督とレオ。2人の共作はこれが三度目だ。「監督が撮る作品も、監督自身もとても尊敬しているんだ。俳優の扱い方や演出、ストーリーへのアプローチの仕方が大好きで。映画への愛情も、作る情熱も素晴らしい!一緒に仕事をするのは本当に自然の流れで、お互いの楽しみだから。これからも続けていきたいよ。」
レオからの熱烈な答えに対して監督は「レオとはきっと人生の考え方が同じなんだ。30歳の差はあっても、本能的なものが共通してる。撮影中は混沌とした現場になることがあるけど、実はそんな中でレオがすることに感銘を受けることがあるんだ。だから私は映画が好きだったんだ、と彼は思わせてくれる。そういう瞬間、映画作りをやってて良かったと思えるんだ。」と大絶賛。2人の信頼関係が感じられるか記者会見だった。

(umemoto)