黒澤明監督、三船敏郎主演の名作「椿三十郎」が45年の時を経てリメイクされる事となり、11月12日東宝スタジオにて製作報告会見が行われた。「椿三十郎」は、浪人・椿三十郎が役人の汚職を暴きだそうと立ち上がる9人の若侍たちに助太刀し、お家騒動の黒幕と対決する痛快アクション時代劇。クライマックスの対決シーンでの血飛沫のあがる凄絶な演出が今でも語り草となっている一方で、黒澤作品の中でもっともユーモアと人間味溢れる作品として、今でも多くの映画ファンの支持を得ている。

 会見にはこれまで多くの話題作を手がけてきた森田芳光監督、椿三十郎を演じる織田裕二、三十郎のライバル室戸半兵衛を演じる豊川悦司の他、松山ケンイチ、中村玉緒ら豪華キャスト陣が衣装姿で現れた。また、製作総指揮にあたる角川春樹もキャスト同様着物姿で壇上に上がり作品への思いを語った。
 日本映画界で黒澤作品のリメイクは今作が初めての試みであり、また今回は当時の台本をそのままにリメイクされる。森田監督は「名作を今の若者たちに見てもらうチャンスになると思いあえて同じ台本を使った。また、オリジナルとリメイクを見比べることで日本映画の歴史を感じることのできる意義のある作品だという気持ちで取り組んでいる。黒澤作品をリメイクするというのはとても目標の高いことだが、どれだけ期待されてもその期待に応えられる作品になると思う。」と語った。
 
 また今作は黒澤作品のリメイクというだけでなく、豪華なキャストにも注目が集まる。
 オリジナルで三船敏郎が演じた椿三十郎役に織田裕二を指名したのは、「ヒーロー像は時代と共に変わっていくもの。直感で現代のヒーロー(椿三十郎)は織田裕二さんだと感じ、それしか考えられなかった。」と森田監督。出演を決めた理由を織田は「森田監督からのオファーだったことと、作品を見てとても面白いと感じたこと。この作品には、いじめや汚職が多く報道されている現代と重なる部分があり、それに椿三十郎と若侍たちが立ち向かうというストーリーで今の時代に合っている。今この作品に出会えて良かった。」とコメントした。またオリジナルを見た上で演じるにあたり「三船敏郎さんを真似しそうになってしまう事もあるが、<織田裕二が演じる椿三十郎>を心掛けている」と語った。
 主人公・椿三十郎のライバル室戸半兵衛には豊川悦司、三十郎にラストの見所である一騎打ちを挑む。オリジナルと違う独自の演じ方の工夫として「オリジナルの室戸は目が凄くギョロギョロしているのでそうならないように気をつけている。」とコメント。三十郎と共に役人と対決する若侍衆のリーダー役松山ケンイチは「この作品に出会うことができて光栄に思う。現場はみんなが楽しんでいて、監督は演出しながら笑ってます。」と撮影現場の様子を語った。椿三十郎・若侍が汚職を暴こうと挑む役人たちには風間杜夫、西岡徳馬、小林稔侍。他にも鈴木杏、佐々木蔵之助、藤田まこと。また14年ぶりの映画出演となる中村玉緒、と日本映画界を代表する顔ぶれが集結した。
 
’07日本映画界注目の一大プロジェクト、森田芳光監督版「椿三十郎」は12月1日クランクアップ(予定)、2007年12月公開。