第19回東京国際映画祭コンペティションに出品されたなんともフランス的な恋愛模様を描いた『チェンジ・オブ・アドレス』。タイトル通り、家を変えるごとにすれ違う男女、生まれる恋そして愛が刻まれる。
パリに住む人々の生活を切り取ってきたような自然体の魅力が本作にはあり、これが本日の観客達の心をとらえたようだ。プロデューサーのフレデリック・ニーデルマイエール氏は、フランスでの作品のヒット要因についてこう語る。「この作品が国際的にも成功を収めているのは登場人物の思いが観客の心になにか響くものがあるからだと思います。そしてこの作品にはフランス映画の伝統を受け継いでるものがあると思います。作家性のある作品が久々に登場しましたね。」

主人公のダヴィッドはエマニュエル・ムレ監督自身が自分からインスピレーションを得て作り出したキャラクターだ。「シナリオは映画のために作ったんですが、芝居にしてみては?という話も頂いています。日本でできたら素晴らしいですね。今回の作品ではまだ恋愛というテーマに答えは出ていないですが、次回作で出せればと思っています。」恋愛と友達の関係を超えた関係のダヴィッドとアンヌ。アンヌを演じたフレデリック・ベルは「恋愛っていろんな形を持つものだと思います。彼らのように制約の無い関係は近代的でパリにはよく見られる愛の形なんじゃないかと思いました。」と語る。

この映画に特徴的なのは本当にそのままの彼らの生活ぶりが感じられることだ。観客からはこの撮影法に質問が投げかけられた。フレデリック・ベルは「“自然”に見せるには、俳優の演技に頼る部分が大きいのが最近の撮り方なんですが、ムレ監督の場合はセリフはぎっちり書かれているシナリオで、その言葉に自分で厚みを加えていくという作業の仕方でした。これが自然に見える秘訣なのではないでしょうか。」と撮影方法について明かした。

会場からは「監督のまゆげが気になる」などユニークな質問も飛び出した。その質問に監督本人は「あのまゆげには特殊メイクを使いました。かなり高くつきましたよ!」などとさらりとジョークを返す。

人生を流れるままに受け止め、生きていくパリの若者達・・・。
その生き方が果たしていいのか悪いのかは誰にも決めることはできないが、いえることはこういう愛の形もあるということだろう。