言わずと知れた超大ヒットシリーズ『007』。その最新作『007/カジノ・ロワイヤル』が11月23日から開催される東京国際シネシティフェスティバルのオープニングとして上映され、12月1日には丸の内ルーブル他全国松竹東急系にてロードショーされる。それに先がけ、マーティン・キャンベル監督、エヴァ・グリーン、プロデューサーのバーバラ・ブロッコリとマイケル・G・ウィルソンの4人が来日記者会見を行った。記者会見前には世界で初めて、そしてその日限りのものとなる21分の特別映像が上映されたため、上映時のカメラ持込禁止など緊迫した厳戒態勢の中での会見だった。

今回の最新作で最も注目すべきなのは、ジェームズ・ボンドが「00」のライセンスを取得するまでの過程が描かれていることだ。つまり言うなれば”007/エピソード1”である。よってこれまでの作品では観ることのできなかった未完成なジェームズ・ボンドが、その姿をさらけ出しているのだ。「今回の作品で最も重要なことは、ジェームズ・ボンドがつくられていく過程が描かれていることだ。今回のボンドは今までの彼とは違って、非常にもろく傷つきやすい。それは外見の面でも同じで、彼は今回の映画の中で顔にいくつもの傷を負う。”00”のライセンスを学ぶ過程でボンドが出来上がっていくのを描くためにダークなアプローチをしていったんだ。」(マーティン・キャンベル監督)

そのことはこれまでのボンドガールとのラブシーンにも現れているという。「これまでのボンドガールから、ビキニを着ていたり、激しいSEXシーンを期待している人は多いと思う。でも、そういう人たちにとっては少しがっかりするものかもしれないわ。私が演じたヴェスパーとボンドとの関係は純粋な、実にプラトニックな部分の感情がきめ細かく描かれているの。」(エヴァ・グリーン)

そういったこれまでの作品とは視点を大きく変えた作品を今回作ったことには大きな理由があるとプロデューサーは語る。
「イアン・フレミングが初期のジェームズ・ボンドを描いたこの原作の権利を僕たちは持っていなかった。けど、絶対にこの原作を映画にしたいとずっと思っていたんだ。その中で、2000年にその版権を得ることができたのが一つの理由ではある。しかしもっとも重要なことは、最近のボンド映画が、あまりに派手になりすぎているとバーバラと話していたんだ。だから原点回帰という意味でベーシックなところを見せたかったんだ。」(マイケル・G・ウィルソン)

それはガジェット(小道具)についても同じことだという。「だから今回のガジェットはとても現実的なものばかりなんだ。現実的というのは透明の車なんてものはでてこないという事で(笑)、ガジェットのトーンがとても現実味のあるものなんだ。」(マイケル・G・ウィルソン)

他にも今回のボンド映画には注目すべき点がある。その一つが脚本を担当しているポール・ハギスだ。
「ポール・ハギスを起用したのは監督のアイデアなの。まず他の2人の脚本家につくってもらって、それをポールに見てもらったら彼がとても気に入ってくれて。これを練り直してより素晴らしくする作業に自分も参加したいと言ってくれたの。」(バーバラ・ブロッコリ)
「1年ほど前に彼と夕食をしていたら、007の大ファンだということを聞いたんだ。世界中の人がすでに知っているように『クラッシュ』という彼の実に素晴らしい作品から、今回のキャラ作りに大きな貢献をしてくれると思ったんだ。」(マーティン・キャンベル監督)

そして、決して見逃してはいけないのが、今回の繊細なジェームズ・ボンドを演じたダニエル・クレイグである。「彼はイギリスでとても重要な俳優だと思う。今回のボンドのもろく、傷つきやすい面を彼は実に見事に演じてくれた。きっと誰もがダニエル・クレイグ版ボンドを好きになるはずだし、彼の大スターになる要素を感じてくれると思うわ。」(バーバラ・ブロッコリ)

(林田健二)