第11回釜山国際映画祭出品作品『ハリヨの夏』初日舞台挨拶
家族はありながら、日々の孤独感を埋められない少女、瑞穂。
クールな顔立ちとは裏腹に激情を抱え生きている瑞穂は初の主演を務める於保佐代子にどのように映ったのか。
「瑞穂にはモデルがいると聞いていたので、監督からお話を聞いたり、撮影に入る前にかなりディスカッションをしました。」と役作りにはかなり力を入れていた様子。
この映画ではやはり瑞穂が成長していく姿が頭に残る。
「シーンごとに顔を変えていくことを意識していたんですが、観ていただいた方に瑞穂の成長を感じたと言っていただくと嬉しいです。完成したものを観た時は自分の顔がたくさん映っていて恥ずかしかったですが・・・(笑)。」と話す。その無邪気な笑顔にはまだ18歳の素の表情が見てとれる。
主演の於保佐代子と杉本翔を演じた高良健吾は撮影当時、本当の高校生だった。瑞穂と翔の年と同じ年の役者を使う事は中村監督のこだわりでもあった。「役を決めるためにオーディションを行ったんですが、2人の目力がとても印象的だったのを覚えています。見た目は大人しいけど、芯の強さを感じたんです。それに今の高校生にないピュアさもあるんですよ(笑)。」
それは撮影中の出来事。キスシーンの時やりづらそうにしている2人に気づいた監督が声をかけると、「鼻があたってできません。」と答えたそう。
監督は『ハリヨの夏』が2人に与えた成長の変化をこう話す。「撮影期間は2週間しかなかったんですが、2人の顔つきが本当に変わって凛々しくたくましくなった、と感じたことは忘れませんね。ただ、高良くんは今でもこういう場になるとあんまり話をしないんですが(笑)。」監督のコメントに対し、「今日はしゃべっている方です。」と小さい反抗を見せる高良健吾。そしてそんな小さなやりとりに微笑む於保佐代子。撮影期間は2週間と短いながらも、その間にできた絆は深いものになったようだ。
「川に入って泳ぐという体験や、今まで演じたことのない瑞穂について監督と話したりと貴重な体験をたくさんしました。そして、一つの作品を作りあげていくことに喜びを感じることができました。また心地よい空間で、たくさんの人にこれからも出会って生きたい。」と話す於保佐代子に対し、高良健吾は「自然光の中で長回しをする監督の手法が忘れられないです。今自分の演技を観ると下手だな〜という印象を持つんですが、それはそれでもう二度とできない演技だし、そのときは監督に『高良くんのしたいようにやって』と言われて演じていたので、これはこれでいいんだと思っています。」と、演技に対する真摯な姿勢を感じ取らせるコメントを残した。
『ハリヨの夏』とともに成長していく於保佐代子と高良健吾。そして、これが初劇場作品となる中村真夕監督。
出品中の釜山国際映画祭での結果も楽しみだが、長い目で見たこの3人の今後も気になるところだ。
(ハヤシ カナコ)