10月10日、有楽町シネカノンにて『魂萌え!』の完成披露試写会が行われ、主演キャストの風吹ジュンと三田佳子、そして阪本順治監督が登壇した。

「実年齢よりも上の敏子を演じることは不安でもありました。でも、共演した加藤治子さんにその不安を告げると、『なに言ってるの、女優なんだから化けなきゃ!』と言われて、やる気がでました。」と、風吹ジュンは笑顔で若干の不安が当初あったことを話してくれた。

関口敏子は、夫が死ぬまで平凡な専業主婦だった。しかし定年退職をした日から3年後、夫に先立たれ、それまで知ることのなかったたくさんの事実に直面する。
その中のひとつの事実、「夫が10年もの間隠し続けた愛人:伊藤昭子」を演じたのは三田佳子。「愛人というと、奥さんよりも若いのが普通なんでしょうが、昭子は年上の愛人なんです。だから、隆之さん(敏子の夫)がどのようなところに惹かれていったのか観客の皆さんにわかってもらえるよう工夫しました。昭子は福島出身だったので、方言を取り入れてみようと監督に相談したところ『いいですよ。』と言っていただけたので、時折方言で話しています。映画を観て下さった原作者の桐野さんに『あれはエロい。』と言われて嬉しかったです(笑)」と、映画の中で生きている女優にしかできない役作りの工夫があったようだ。

献身的に支えてきた夫に裏切られ、家族には失望させられ・・・と敏子を襲うのは身に沁みる現実だけのようにみえる。
しかしそこには、自分を支えてくれる女友達の姿や、忘れ続けていた夫以外の男のぬくもりなど、柔らかく温かい現実もある。多様な味をもった事実が『魂萌え!』には揃えられているから、新聞で連載が開始されたときも女性たちの共感を得られたのだろう。

「この映画は大人向けのブルースような作品だと思います。第二の人生を歩む人への応援歌になるといいですね。撮影期間は47日間で私はその間ほとんど出動していたんですが、そこで感じたのはやはり監督のお力です。撮影中、息子役の田中哲司くんとのワンシーン・ワンカットのシーンがあって、私は最後までいけた!と思ったんですが、監督から『もう1回いきましょうか。』と声がかかりまして・・・(笑)。私は最後のセリフを『いいかげんにしなさいっ!』と言ったんですが、それは脚本では『いいかげんにしてよっ!』だったんです。まだまだ読みが甘かったんです。私なんかよりも監督の方が何倍も敏子をわかっているんです。」

と、微妙な女心を描いた作品は阪本監督作品では異色であり監督にとっても『魂萌え!』はチャレンジだったようだ。「今までやったことのないものに興味をそそられて映画化することに覚悟を決めました。パンフレットにも書いたんですが、『最後に残るのは女』なんだと原作を読んだ時に感じたんです。48の自分が果たして映画化できるか不安ではありましたが、熟女に囲まれながら『当たって砕けない!』をモットーにして撮影しました(笑)。普通の生活を送っている人たちにどう言った感想を持っていただけるのか今から楽しみです。」と、完成披露に訪れた観客たちにメッセージを送った。

楽しい老後。それは果たしてどんな老後なのか。
未来は誰にもわからないが、確かに女は残される立場。そんな心構えを敏子といっしょに今、してみませんか。

(ハヤシ カナコ)