9月16日(土)、『出口のない海』が初日を迎え、市川海老蔵、伊勢谷友介ほか主要キャストと佐々部清監督による舞台挨拶が、丸の内ピカデリー2にて行われた。

戦争によって、希望に満ちあふれた未来を奪われ、最後の秘密兵器・「回天」に乗った若者たち。脱出装置のない定員一名の回天に乗って敵艦に激突する究極の任務に、自ら志願した者たちの本当の想いと、その周辺の人々の姿を描く。

登壇者は主題歌である竹内まりあの『返信』をBGMに、映画を観終わって感動覚めやらない場内のたくさんの拍手に迎えられ入場。
佐々部監督は「山田洋次監督から声をかけてもらって、一年間映画をしょいながら、伝える映画を作ったつもりです。周りの人に伝えてくれればと思います」と語った。また、並木(市川海老蔵)の恋人・鳴海美奈子役の上野樹里は「ワンシーン、ワンシーンをがんばって演じました。良い作品に出会えてよかったと思っています。」と喜びの表情を見せた。
佐久間安吉役の柏原収史は、映画のために作られた回天の内部について、「回天の中は足を組んで座るんです。(狭くて)それ以外に座れない。それに、出発したら覗き窓はない。いつ爆破するか分からない。回天に乗り込んだ時、妙なテンション、寒気を感じました。乗組員の気持ちが憑依しているようでした」と話した。
長距離ランナーでオリンピックを目指していた北勝也を演じた伊勢谷友介は、特攻隊員の心境について、「本物の特攻隊員だった人に話を聞きました。特攻隊員として、死ににいく。でも別れ際は明るくて笑っていたりするそうです。どんな状態でも自分を保とうとする強さをとても感じることができました。」と語った。
甲子園優勝投手で戦争のため野球の夢を諦めなくてはいけなかった並木浩二を演じた市川海老蔵は、戦争で翻弄される並木について「肩を壊した彼(並木)にも未来はあったが、捨てなくてはいけなかった。海軍というところで命を捧げます。今だからこそ、こうやって生きられます。昨年は終戦60周年でたくさんの映画がありましたが、1年後極端に戦争の映画がなくなっています。戦争を伝える義務として、大変価値のある作品です。」

なお、この日は「野球」にちなんで、世界大会で優勝経験のある選手も所属するボーイズリーグの名門「城東ボーイズ」の少年たちが駆けつけ、ゲストから少年たちに野球のボールが手渡された。
(M.NIBE)

映画『出口のない海』丸の内ピカデリー2他全国公開中
出演:市川海老蔵 伊勢谷友介、上野樹里、塩谷瞬
監督:佐々部清 原作:横山秀夫、脚本:山田洋次・冨川元文
(C)2006『出口のない海』フィルムパートナーズ