さよならから始まったラブストーリー『ウィンター・ソング』。11月の公開を前に、来日記念イベントと記者会見が行なわれた。出席したのはピーター・チャン監督、金城武、ジョウ・シュン。金城武の帰国を喜ぶファンの中には、涙を流す人も大勢いた。

かつて愛を育んだ男女が、10年後香港の人気俳優と中国のトップ女優となり、ミュージカル映画で再会する。くしくもその映画のストーリーは、現実の2人を映しているかのようなもの。2人にとっては現実と映画の中の世界がオーバーラップしあいまいになっていくのだが、その2人を演じた金城武、ジョウ・シュン自身も現実と映画の境があいまいになっていったという。
 ジョウ「毎回、金城さんを見るたびに私が演じた女性が、彼を捨てる時にどれほど苦しんで、その分どれほどの強い決意があったのかをつくづく感じることが出来ました(笑)この役をやっていると自分との境目がなくて、しかも劇中劇の役も同じ感じでしたので、彼女の矛盾した気持ちが私自身にも現れました。」

 金城「僕もオーバーラップしていきましたね。哀しいシーンは自然と哀しくなって。撮影の終わりの頃はこの芝居が終わることが切ないなって感じました。他の映画でもありますが、この映画は劇中劇の役もそんな感じなので余計にオーバーラップしていきました。」

そんな現実と映画がオーバーラップする撮影のためか、2人にとって特別な作品になったのだという。そして、ピーター・チャン監督にとっても特別な作品になったようだ。
 監督「2人がたくさんアイディアを出してくれて、台本は毎日のように変わっていきました。その分、これほど近距離で役者と交流したことはないほど、親交が深まっていきました。それは恋愛以上の温かさでした。忘れがたい作品です。

 金城「現場のセッティングが終わって、あとは僕らがでてくるのを待っているだけという状況が何度もあったんですね。そのたびに僕らは何をしているかというと、楽屋で一つのソファに監督を真ん中にして3人で寝そべって台本を見ているんですよ。ここおかしいよ、とか言ったりして。その変えたい部分も同じ考えだったりして。そのとき思っていたのが、『かわいいなぁ、俺ら』って(笑)
寒い季節の中で本当に暖かくできましたね。」
(林田健二)