黒沢清監督最新作『LOFT』が初日を迎え、中谷美紀さん、大杉漣さん、黒沢監督、主題歌を歌っている名取香りさんがテアトル新宿で舞台挨拶を行なった。

本作が3年ぶりの長編最新作となる黒沢監督は初日を迎えた事で、『LOFT』の新しい第一歩が始まったと言う。「この映画はいろんな要素がつまっている映画です。基本的には中谷さんと豊川さんの恋の行方を追っていただければ楽しんでもらえると思います。この映画は一言で言い表せる映画ではありません。だからこそ観終った後にいろんな方と意見を出し合って、豊かな言葉が生まれることを望んでいます。中谷さんは本当に素晴らしい女優さんで、役がどうこう、設定がどうこうというのを超えて、こんな素晴らしい女優さんが日本にいるんだということを改めて感じ、堪能してもらえれば幸いです。」と静かに語る。女性のミイラという設定については「10年以上前に中国の奥地で実際にミイラが発見されたニュースを覚えてませんか？あの時発見されたミイラは所いわゆるエジプトのミイラのように乾ききっているのではなく、肌は柔らかで髪は長く美しかったんです。あのニュースを元に、女性の主人公の物語を撮りたかったし、ミイラの気持ちは現代に生きる女性にも通じるものがあるんじゃないかと思いました。」と応えた。

若くして芥川賞を受賞し、将来を渇望されている主人公・礼子を演じた中谷美紀さんは黒沢映画初出演。「新鮮な映像に驚かされる、いい作品です。監督はまさしくご自身の作品のような人で、すごく心地良い距離感を保てる人。最初に台本を頂いた時はわからないことがたくさんあったんですが、監督に”人は理由がなくても行動するんです。”と言われて心の霧が晴れたように感じました。実際世の中に起こっていることのように、説明がつかなかったり答えがなかったりすることはたくさんあるんです。あまり深く考えずに楽しんで観てください。」と語った。

これまでにも黒沢作品に出演してきた大杉漣さんは「黒沢監督は役者やスタッフときちんと向き合って付き合うことが普通にできている人です。心地よい関係を築けている、深みのある監督です。画の見所は、よくわかりません。ただ、そこに黒沢監督がいることを感じる作品です。」と語った。

演技派俳優達が魅せられた黒沢監督の世界『LOFT』。是非その世界を堪能してみてください。

(umemoto)