「長い道のりだった」9月30日より渋谷シネ・アミューズで公開される『ベルナのしっぽ』試写会が行われ、原作者で物語の主人公である郡司ななえさんは、この映画が多くの人の目に触れる今日までの道のりをそう振り返った。
舞台挨拶には郡司さんのほか、山口晃二監督、主演の白石美帆、そして郡司さんの現在のアイメイト(盲導犬)であるペイラと、劇中でベルナを演じたポーシャの5人(?)が出席した。映画初主演となる白石美帆は、盲目の女性しずくを演じたことについて「これまで目が見えて生きてきたので、役の上でどうやったらしずくに見えるかという点が非常に難点でした。例えばセリフを言われた時に思わず相手の目を見てしまうんですよね。でもこの役を演じて、今まで私が持ってしまっていた偏見に気づきました。目が見えない人は料理ができないとか思い込んでいたんですが、てんぷらも揚げられるし、包丁も使うんですよね。本当に”心の目”で見ているんです。」と語った。

映画にも出てくる「ベルナのお話の会」は、まだ盲導犬という存在が社会に理解されなかった時代に、郡司さんがベルナと始めた実際のもの。ベルナがこの世を去ってからも地道に続けたその活動は、いまや900回にものぼるという。そしてこの日の試写会を迎え、郡司さんは実に晴れ晴れとした顔をしていた。
「ベルナは元は私の盲導犬でしたが、今やみなさんの盲導犬になりました。長い道のりだったけど、今日やっとここまでたどり着いた。この映画を観て、みなさんの心の中に幸せの花を咲かせてもらえれば、天国にいる夫も、ベルナも、2番目のアイメイト・ガーランドもきっと喜ぶと思います。どうか心に幸せの花を咲かせてください。」
(林田健二)