井上実直が死者も出るほど過酷な「日蓮宗100日大荒行」に入行し、その後グラウンドゼロやパールハーバーで祈りを捧げる様子を彼の友人である佐々木誠が記録したドキュメンタリー映画『Fragment フラグメント』の先行上映イベントがUPLINKで行なわれた。この日は『Fragment フラグメント』に引き続き『イラクニ接近ス』の上映も行なわれ、トークショーには2作品の監督と井上実直さんに加え、『二重被爆』の青木亮監督が登場した。

『Fragment フラグメント』が起きた時、佐々木監督は第三次世界大戦が起こるのではないかと怖くなったと言う。「普段はPVなどを撮っていてんですが、これまでは自主製作映画を作ろうなんて思っていませんでした。でも9.11が起こって、何か記録を残さなければいけないと思ったんです。その時ちょうど友人の実直に”日蓮宗100日大荒行に入行する前と後の自分を撮ってくれないか”と言われて。それを聞いた時に彼を通して9.11後の世界の断片として描けるんじゃないかと思って撮りました。」

映画の冒頭は僧侶になる前にグラウンドゼロを訪れた井上さんが映っているのだが、大荒行後の彼の表情の変化には驚く人も多いだろう。「最初にグラウンドゼロに行った時は、ただあの場所に行ってみたかっただけだったんです。でも日本に帰ってきてから矛盾を感じ、ただあの場所に行っただけで終わってしまったことにひどく後悔をしました。グラウンドゼロに行ったことがキッカケで大荒行に入行ことを決心し、もう一度あの場所に行って祈りを捧げることを考えていました。」と語った。「まだ自分に何ができるのかが明確ではないんです。」と素直に語る井上さんに対し、青木監督は「井上さんのように模索しながらでも何かできないか、と考える人間がいることに希望を感じました。そういうことを素晴らしいと思いたい。結論が出るには時間がかかるとは思いますが、今大事なのは結論ではないんです。」と語った。

1人の人間を通して戦争を、世界を見つめることができる『Fragment フラグメント』。それは今の私たちに必要なことなのかもしれない。

(umemoto)