8月30日から9月9日までイタリアのヴェニスで開催されているヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に、日本のアニメーション映画としては宮崎駿監督作品「ハウルの動く城」以来2度目となる、アニメ映画「パプリカ」(監督:今敏)が出品されている。ヴェネチア国際映画祭ほか世界各地の映画祭から出品依頼が殺到し、インターネット上でも映画の内容をめぐり、情報争奪戦が繰り広げられてきた待望の話題作。現地時間9月2日17:00より公式上映が行われ、ついにその全貌が明かされることとなった。

現地時間9月2日12:00pm 今敏監督・公式記者会見
内容:別途資料
イタリア人記者からは「コンペ部門の中でも一番いい」との声も聞かれ、金獅子賞への期待が高まる。

現地時間9月2日17:00pm 「パプリカ」公式上映
レッドカーペットに到着した今監督を待ち受けていたのは、観客からの盛大なラブコールと各国報道陣のフラッシュの嵐。子供から大人まで幅広い年代の人々を魅了する今敏作品の人気の高さをうかがわせる。
上映会場となるサラ・グランデ会場はキャパ約1000人だがすでに満席。それほど映画「パプリカ」の評判は高い。上映前、場内に「サトシ・コン」のアナウンスが流れると、熱狂的な歓声と拍手に包まれた。上映終了後の拍手とスターティング・オベーションは5分以上鳴りやまず、映画「パプリカ」公式上映は熱狂のうちに幕を閉じた。監督は、退場の際もひっきりなしにサインを求められるなど、9月9日に行われる受賞式への期待はますます高まるばかりである。

公式記者会見の内容−−−−−−−−−
(記者)ベネチアは初めてと聞いているが、どのような印象か?
—(今敏)ベネチアのみならずイタリア自体が初めて。この記者会見も含めて現実を楽しんでいる。昨日、観光をして、よくもこのような不可思議な街があるものだと驚いた。街を見ているだけで楽しい。太陽の光が違う。多様の国だと実感した。

(記者)映画はすばらしかった。今回の映画祭の中で今のところ一番良い。ビビッドさ、明るさは技術的にどのように仕上げたのか?
—(今敏)楽しんでいただけて嬉しい。作品を作る時は全体のイメージは決めない。最終的イメージを決めると予定調和のようで面白くない。むしろディテールにこだわった。イメージをつくり、それらを連想でつないでいく。そのためにもイメージを大切にした。イメージのつながりの中の1つ1つのイメージを楽しんでもらいたい。

(記者)なぜ筒井さんの作品は海外でうけるのか?
—(今敏)筒井さんは常識をよく知っているから非常識の面白さが書ける。常識を超えたり、壊したりすることで筒井さんの世界の面白さがある。

(記者)女性が主人公にした作品が多いがなぜか?
—(今敏)ついそうなってしまう。自分が男だから男を主人公にするとカッコ良くない部分も描いてしまいそうという思いがあるのかもしれない。

(記者)筒井康隆の小説が書かれたのが1991年で10年以上前だが、小説と比較してどこが違うか?
—(今敏)原作は夢の恐ろしさ、面白さを文章表現している。それを映像に置き換えて表現をした。原作ストーリーを減らしたり、原作にないイメージが今回の作品にあるかもしれないが、これは原作の再現ではなく筒井先生のマインドの表現、先生の題材のアプローチの仕方に自分の解釈を加えた。

(記者)「千年女優」と同様に映画の中の映画という表現が見られるが、どのような理由によるものか?
—(今敏)生活の中の現実と頭の中で行っている事は同じではない。今の私の頭の中にもこの会場の現実とは別に、日本や日本のスタッフのことを思いだしている。現実の進行と夢の中をパラレルで同時進行させていることに興味がある。

(記者)なぜ実写でなくアニメか?
—(今敏)肖像写真と肖像画があるようにそれぞれが写真でしか表現できないもの、絵でしか表現できないものがある。パプリカを実写にすることは可能だと思うがアニメの呼吸をフィルムにしたかった。

(記者)今回日本の作品がたくさん選ばれたが、どう思うか?
—(今敏)自分以外の作品についてはコメントできないが、このような歴史ある映画祭で選んでいただき不思議な気もする。

(記者)音楽はどのようなイメージを持っていた?
—(今敏)自分の映画にどのような音楽が合うかを考えたわけではない。むしろ平沢さんの音楽にどのような絵がいいかと思い、映画を作った。自分の中の神話と科学とか夢と現実というようなことは、平沢さんの音楽からのイメージ。音楽のイメージから映像を考えている。

(記者)今回の映画祭では日本のアニメ作品がたくさん上映されているが、日本での現実とことなるのでは
—(今敏)自分のその当事者なので俯瞰にするのは難しい。その上、自分の作品はアニメの主流ではない。それなのに、このような歴史ある映画祭にかけていただいて大変光栄。

(記者)どのような観客を想定しているか?
—(今敏)商業的な味覚は得意な方ではない。むしろどこかにいる自分のような人に対して作っている。すると自分が年をとればもっとおとな向けになるのだろうか?決して子供向けではないので、せめて高校生から上だろうか?