阪神・淡路大震災から復興に至る男の勇気、それを支える家族、友人を実話に基づいて描いたヒューマンドラマ『ありがとう』の完成披露試写会が「防災の日」である9月1日に行われた。

原作は平山譲のノンフィクション小説『ありがとう』(講談社文庫刊)。
被災により、友も、家も、財産も失った古市忠夫、54歳。以前の活気を取り戻すべく、商店街の仲間と街の復興へ向けて奔走していたある日、無傷のゴルフバッグを見つける。それをきっかけに、逆境の中でも生きる勇気と希望を失わないことが大切なのだ、とプロゴルファーを目指すことを決意した忠夫。家族や友人の支えによって59歳で見事プロ合格を成し遂げるのだった。

震災当時、東京にいた万田監督は、震災のリアリティを感じていない自分が監督をすることを悩んだという。「プロデューサーの仙頭さんに、“リアリティを感じていないからいい”と言われて引き受けました。震災という極限状態の中で生き残った一人の男性とそれを支える家族や町の人達の信じられないような奇蹟の物語です。」
古市忠夫の妻(千賀代)を演じた田中好子は実際に千賀代さんに会い「控えめだけれども、芯の強い明るい女性。陰で支える人なんだと思いました。
」作品については「どん底から這い上がって、夢に向かって努力している主人公を通じて、希望の大切さ、生きる希望を見直して欲しいです」と話した。
震災前日、実家の神戸に母親を残して東京に戻ってしまったことを後悔しているという仙頭プロデューサー。震災で亡くした友人もいる仙頭は、2001年に原作に出会い、「映画化することが自分の使命だと思った」と語る。
撮影には述べ1000人にも及ぶ神戸市民が参加。また、リアリティを出す為に、瓦礫と化した商店街は実際に再現された。瓦礫を焼く作業だけで1ヶ月を費やし、現場は焦げ臭さが立ち込めていたという。ロケ地を訪れた古市千賀代さんは、震災当時を思い出しその場に泣き崩れたという。仙頭は「この作品で、生きる意味を日本中に感じてもらいです」と作品に懸けた想いを語った。
(t,suzuki)