「最初の頃はプレッシャーゼロ。現場が楽しすぎて図に乗っちゃったわ。」と、監督を初めて務めたとは思えない堂々したコメントっぷりはさすが。

脚本から手がけた本作は、桃井かおりの小さい頃の母親とのエピソードがきっかけとなっている。「母親が台所で上の棚に鍋を置こうとした時に、母のわきにひげが生えてるのが見えたんです。『お母さんなんでわきにおひげが生えてるの?』って言ったら、『人は大きくなったらわきのしたに卵を隠すから。』って教えてくれたんです。それ以来、大人はみんな卵をわきに隠しながら生きてるんだと思っていました(笑)。さすがに今は思っていませんが、作品に登場する家族のようにそれぞれがなにか隠して生きていたりすることを母は子供の私にわかりやすく教えてくれたんだと思います。」と、話した。

もともとはもっと過激でえっちな作品を作りたかったとも話す。「この企画はもともと今のOLを応援するための映画というスタイルを持っていたので、それでは合わないと思いました。今考えれば、きっとサディステックな作品に仕上がってしまったでしょうね。家族をテーマに選ぶことで過激的な内容との平均も取れてたくさんの世代の方にみていただける作品に仕上がったと思います。今までやってみたかったことや、やるべきこと、やっちゃいけないことすべてに挑戦することができたからたくさんの人に観てほしい。」と作品の出来には始終満足しているようだった。

この作品の見所は、桃井かおりが監督をしている点に加え、お笑いの山田花子が主演しているところ。「無花果は花を咲かせずに実をつけます。そんな女性を思い浮かべたら花ちゃんがでてきて(笑)。そうしたら一般公募に応募してくれたんです。」と話す桃井かおりの横で、はにかむ山田花子。「監督は本当に細かいところまで演技指導してくれて、実際に私の役を演じて見せてくれました。でも現場に行くと覚えたセリフが変わっていたりするので、困りました。」と現場の様子について話した。「花ちゃんと共演すると、石倉(三郎)さんも高橋(克実)さんもメロメロになっちゃうんです。実は花ちゃんってすごく凶器的な要素も持ってるんです(笑)。俳優にはセリフがないと怖がる人もいるけど、花ちゃんはこわがらないでドシンとしてる。スクリーンに映る花ちゃんは本当にかっこいいですよ。」と山田花子の女優としての魅力が開花した作品にもなったようだ。

日本映画界では女優が監督をするのは桃井かおりが初。世の時代の先端を行く人は常に先を行くんだと思い知らされた。「監督をやってみて俳優という仕事をよく理解できたし、女優“桃井かおり”はまだまだやっていけると思いました(笑)。これからは、監督思いのいい女優になります!」と宣言。これからもよりいっそうの女優の輝きと、新進気鋭の女優監督の輝きを持ち続けてほしい。

(ハヤシ カナコ)