大阪で生まれ育ったヤン・ヨンヒ監督が自身の父親を描いたドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』が公開初日を迎え、監督によるティーチインが行なわれた。本作はベルリン国際映画祭、サンダンス映画祭などといった映画祭で上映され、多くの人に感動と共感を与え反響を生んだ作品。
日本での公開は特に緊張しました、と語る監督がこの作品を撮るキッカケになったのは自身の行動力だった。「フィクションより実際に生きている人の生活がドラマチックに描けるノンフィクションに惹かれます。何も知らないままでカメラを持ってすぐに行動を始め、インタビューなどをしながらアジアの国々を回っていました。本作は家族をテーマにしたい、そして出来れば劇場公開作品にしたいと思って作りました。」

Q:釜山映画祭で上映されたそうですが、上映した感想は?
A:「韓国が本当に変わったんだということを感じました。昔の韓国では絶対ありえなかった上映でしたから。今は先入観も偏見もなく、真っ白な北朝鮮への好奇心を持っている若者が多いようです。上映後、自分の家族の話をしに来てくれる人が多くて嬉しかったですね。この映画を見て自分の家族を想うのは世界中で共通の現象でした。」

Q:監督のご両親の反応は?
A:「実は、この作品の編集は父が倒れたので焦って仕上げたんです。世界で一番初めに見てほしかったですから。でも父は目を開けるのが辛い状態になってしまったので、未だにこの映画を見ていません。韓国人の反応を気にしていましたね。私が”皆笑って泣いて、お父さんの容態を心配してくれたよ”と話すと、不思議そうな顔をしていました。母親には、父親のことを娘ながらに悩み、関係を考えつづけていたことに対してありがとう、と言われました。母の言葉には救われましたね。」

Q:監督の国籍は?
A:「韓国です。悩んでいたんですけど、実は朝鮮籍でも韓国籍でもよかったんです。どこのものでもいいから、ノービザで安全にいろんな国に行ける便利なパスポートが欲しかったんです。」

Q:今後の作品の予定は?
A:「ドキュメンタリーを2〜3本考えています。家族モノと全くそれとは違うモノです。また、エッセイも出したんですが、この映画を完成させるまでの私の映画に出していない思い出や、普段接することができない北朝鮮の生活も少し書いています。先のことはあまり考えていないんですが、ずっとドキュメンタリーを撮っていこうとは思ってません。内輪でしか話せない話ってあるじゃないですか。この映画で描いているのもある意味でインサイドストーリーなんですが、こういう話は内輪で話してもしょうがないし、違う立場の人と当たり前に話せるようになったら日本は豊かになって楽しくなるんじゃないかと思います。日本人が北朝鮮にもってるイメージのバリエーションを増やしたいですね。」

(umemoto)