8月21日、シネマコリア2006東京会場の最後を締めくくったのは、安藤大祐監督の『けつわり』。第一回目上映後、監督とシネマコリア代表・西村嘉夫氏によるトークショーが行われた。
『まぶしい一日』の製作スタッフとして参加した安藤監督が日本で作った日韓コラボレート作品。祖父の実話を元に、福岡筑豊地方を舞台に戦時下での朝鮮人労働者と子どもの交流を描いている。題名の『けつわり』は当時の炭鉱用語で、仕事を放り出して逃走する人を指した言葉だという。主演のヤン・イクチュンは韓国インディペンデント映画界で監督・俳優として活躍中で、『まぶしい一日』の『宝島』にも出演している。

<ストーリー>昭和18年、福岡の筑豊地方。炭鉱から逃げ出してきた朝鮮人坑夫(ヤン・イクチュン)を、いじめられっ子の少年が家にかくまう。次第に心を通わせていくふたりだが、捜索の手は目前に迫っていた。

出身地の福岡と韓国の関係について「今思えば、バスや地下鉄で韓国語の表示やアナウンスの導入が早かったので、身近な存在だったと思います」と答えた。監督自身が韓国を意識したのは大学に入ってからだという。
また、監督はニューシネマワークショップの出身でもある。同日行われた特別セミナーの司会者であり、ニューシネマワークショップ代表の武藤氏について、「韓国映画について武藤さんの影響はありませんが、「趣味が韓国で」というのを聞き、飲み会で熱く語られて、偶然だったのですが、運命を感じました!」とエピソードを話した。
在学する東京外語大学とソウル大学の交換留学で渡韓した際、全くコネの無い状態だったという。キム・ソンホ監督が日本人俳優を韓国で探していることを友人のつてで聞き、連絡を取ったところ後日キム・ソンホ監督から電話をもらったことが韓国映画に関わるきっかけになったそうだ。実習作品である「チェイル」をキム・ソンホ監督に持っていったという。この「チェイル」は@niftyのNeoM rePublicで動画配信中なので、閲覧が可能。
http://neom.cocolog-nifty.com/blog/2005/05/post_46f5.html
気になる『けつわり』の予算は30万円で、主演のヤン・イクチュンの飛行機代は出しているが、ノーギャラで引き受けてもらったという。限られた来日期間中に撮影が終了するか大変不安だったそうだが、天候にも恵まれ順調に撮り終えることができた。スタッフがお弁当を持ち寄ってピクニックのようにビニールシートにお弁当を広げてみんなで楽しく食べたそうだ。

現在、安藤監督は『体感時間』というプロジェクトで「過去」、「現在」、「未来」の3本を製作中。『けつわり』はその中の過去にあたる。未来の撮影が終了し、編集中だというが、その内容は舞台もどこだか分からない、言葉も韓国語と日本語の両方を使い、性別の差も分からない、全く区別がつかないカオス、混沌を実験映画的に描いた作品だという。
今後はどのような作品を作りたいか?という問いには「日韓は追い求めているものだが、今後は全然違った作品、娯楽作品を撮りたい」と語った。

この日の上映が監督にとって観客にお金を払って見てもらう初めての機会で、大変感謝していると感慨深げに語った。今後の安藤大祐監督作品にも注目したい。
(M.NIBE)