8月15日、『青春☆金属バット』の完成披露試写会にて、熊切和嘉監督をはじめ主要キャストら6人が舞台挨拶を行った。大人になっても決して終わることのない青春という季節をテーマにした本作品。「楽しかった」と口にした6人全員の様子から、撮影自体がひとつの青春だったことを感じさせてくれた。

究極のスイングを求め、ひたすら素振りをし続けるバナンバ役を演じたのは、主題歌を歌う野狐禅(やこぜん)の竹原ピストル。「大変だったけど楽しかった。」と映画初出演にして初主演の撮影を振り返った彼について熊切監督は「こういうタイプの人はいないかな。声が、芝居のうまい下手以上に胸に響いてくる。」と絶賛した。その讃えぶりは、熊切監督の次回作『フリージア』(来年公開予定)にも連続起用していることでも明らかだ。

バナンバの恋人で、飲んだくれの巨乳女・エイコを演じた坂井真紀は、自身初の巨乳役について「楽しかったですね。なんか見せたくなりました(笑)。すごい発想をされたなぁと思いました。」と和やかに語った。

昔バナンバと同じ野球部のエースで、現在は不良警察官の石岡を演じた安藤政信はこの作品を通じて「大人になれた」と語った。舞台挨拶中、隣にいた竹原ピストルと目を合わせ笑いあう姿が、なによりも撮影当時の楽しさを物語っていた。

 原作である同名マンガ(秋田書店)の著者・古泉智浩は、自分の作品が映画化された気持について「このマンガ自体どこの本屋にも売っていないような作品なんですよ。なのにこんな素晴らしい監督、キャスト、音楽が集まった作品で、もう思い残すことはありません!」と会場中を爆笑させた。

 音楽を担当する赤犬のアキラは「時間がたくさんあったのでいい曲、好きな曲がいっぱい作れた。」と語り、これまで何度もタッグを組んできた熊切監督についても「今までの作品は孤独感があるものが多いので、このマンガのゆるい感じをどう出すのか楽しみだった」と話した。

「パッと見、でたらめで荒唐無稽な感じがするかもしれないけど、がむしゃらに現状を抜け出そうとする青年たちの姿を見てほしい」と竹原ピストルが語るように、苦悩し、それでも前に進もうともがくバナンバたち。そしてラストに流れる竹原ピストル、いや、バナンバが歌う『ならば、友よ』に、僕らの胸は勇ましさで包まれる。
(林田健二)