8月12日『紙屋悦子の青春』が初日を迎え、出演者による舞台挨拶が岩波ホールにて行われた。この日はちょうど黒木和雄監督の没後4ヶ月にあたり、登壇がかなわなかった監督の想いを出演者が代弁した。

岩波ホール総支配人高野悦子氏は「いまだに黒木監督の死を信じることはできません。この場に一緒においでになっております。」と挨拶。
紙屋悦子を演じた原田知世は初日を迎えたことについて、「監督はきっとよろこんでくださっていると思います。」、また役柄の紙屋悦子について「自分のことより相手のことを考えるところが素敵です。私より歳が若いけど精神的に成熟した女性だなと思いました。明石(松岡俊介)とお別れの挨拶で『お体ご自愛ください』というセリフがあるのですが、笑顔で送り出すその一言が言えず、感情で涙があふれてしまって、もう一度お願いして撮り直してもらいました。」
悦子の結婚相手、永与少佐役の永瀬正敏は「みなさまの心の中で成長させて頂ければ」とメッセージをおくり、どんな思いで坊主にしたか聞かれると「役なので髪を切るのは普通です。」と特に抵抗なく髪の毛を切ったことを明かした。
悦子の同級生で安忠の妻・紙屋ふさ役の本上まなみは「映画を撮り終えたあと、体験していない戦争がどんなものだったかずっと考えています。」と挨拶。どんな方に観てほしいか聞かれると、「戦争を知らない人、知っている人に見ていただいてキャッチして頂ければ」と答えた。
紙屋安忠役の小林薫は黒木監督の魅力について「声高に発言していかない、一切説明しない、監督はそちらがより大事と思われていました。出演者がみんなで過ごしたかけがえのない時間・豊かさなど、すごく大事なものを救い上げようとしていた」と述べた。自分よりずっと若い28歳という役を演じるにあたって「気にしないでください。30歳だと思っています!」と監督から声をかけられたこと。監督の優しさとユーモアが感じられるエピソードを披露した。
(M.NIBE)