借金に追われる青年ジアジュ(パン・ユエミン)と、泣く泣く売春婦をしながら貯金をして、田舎に錦を飾ろうとする女性リリ(リ・ジャーシュエン)が偶然出会うところから全てが始まるストーリー。ルゥ・チュエチャン監督は「この2人が子猫と子犬のようにじゃれるような作品を作りたかった。」と制作のきっかけを語った。

ルゥ・チュエチャン監督は中国アカデミー賞で特別賞も受賞している、もはやベテラン実力派監督であり、今本国のドラマに出演中で人気を博しているパン・ユエミンと日本では『ションヤンの酒家』などで知られるリ・ジャーシュエンは5年前にも同監督のもとで共演を果たしている。お三方とも、「同じ作品を制作することができて幸せ。またいっしょに仕事がしたい」と意気揚々とコメントをした。

Q:「デジタルはフィルムに比べて、どんな利点があるのでしょう?」
A(ルゥ・チュエチャン監督):「デジタルは中国国内でも普及し始めており、国をあげて推進しています。今回初めてデジタルで撮影したのですが、フィルムに比べて現代的で後期制作も簡単です。理論的にはコストダウンできると言われていますが、カメラやレンズのレンタル代などもあってあまりコストダウンはできませんでした。」

Q:「映画の中で行われていた結婚式はいつの時代まで行われていますか?」
A(ルゥ・チュエチャン監督):「今現在も行われています。中国は土地も広く地域によって結婚式も違うのですが、今回はロケに行った福建省の結婚式を参考にしました。」

Q:「音楽が大変印象的でした。映画のためにオリジナルで作られた音楽なのでしょうか?」
A(ルゥ・チュエチャン監督):「今まで作ってきた映画とは違う、暖かい雰囲気の流れる音楽を作りたいと最初から考えていました。その考えを音楽プロデューサーに話して、合いそうなものを探してきてもらいました。そして私がピックアップしたものをオーケストラに依頼し演奏してもらいました。」

Q:「田園風景豊かな福建省でのロケはいかがでしたか?」
A(パン・ユエミン):「時期的に短いロケでした。でもロケ先には文化遺産にも指定されている大変自然の美しい場所なので、爽やかな気持ちで撮影を楽しむことができました。監督は僕のことをこの映画の道に導いてくれた人です。今回はお仕事をさせていただくのは2回目で「進歩した。」との評価をいただけて大変嬉しく思っています。」
A(リ・ジャーシュエン):「苦労を感じることはありませんでした。撮影期間は短かったですが、素晴らしい監督といっしょに仕事をすることができて名誉に思っています。監督は俳優を大切にしてくれる方です。精神病を患っている女性がリリについてくるというシーンがあるのですが、そのシーンは演じる俳優にとって大変重いシーンなので、1回で撮り終えようという話だったのですが、カメラマンが撮影位置を間違えてしまって撮り直しになってしまいました。そのミスを監督は大変怒りました。私はその場面を目の当たりにして、なんて俳優を大切にしてくれる監督なんだろうと感動しました。今後どんな厳しい条件でも、監督とともに仕事をしたいと思いました。」

Q:「最後、リリが1人で歩いているシーンにはどのような想いが込められているのでしょうか?」
Aルゥ・チュエチャン監督:「最後のシーンを脚本で読んだだけで、リ・ジャーシュエンは泣いてしまっていたので、なんとしても最後のシーンはロングシーン1回で撮ろうと思いました。現場もとても緊張した雰囲気が漂っていました。私はこの2人と5年前に仕事をしたときに、絶対この2人で映画を撮ろうと決めていました。脚本を書いている時も、2人にどのような運命を課すか、様々な種類のものを考えましたが、この2人が最終的に結婚するというアメリカスタイルのハッピーエンドは真っ先に外しました(笑)。ジアジュとリリにとって人生の糧となる変化をもたらす出会いの物語にしたかったので、最後あのようなラストシーンにすることで、リリに生活の軌道に変化が起こったということを表したかったのです。」

(ハヤシ カナコ)

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