7月20日、奥田瑛二監督長編3作品目となる『長い散歩』の完成披露記者会見が行われた。
一人の初老の男と5歳の少女。男は亡き妻への贖罪の思いを背負い、少女は自分の置かれた残虐な境遇を生き延びる術のように、いつも天使の羽根を背中にまとっている。ある日、男は記憶の中にある山の頂へ、母親から虐待にあっていた少女を連れて行こうとする。しかしその旅は誘拐事件と見なされ、捜査の網の目は徐々に狭ってゆく。はたして二人は終点のユートピアに辿り着けるのだろうか……

これまでの作品においても、現代社会に足りない“真実の愛”、“情感”を描き続けてきた奥田監督。『長い散歩』では名優、緒形拳を主演に、老人の心のハードボイルドが撮りたかったという。「今までの緒形さんの作品は、緒形さんという大きな名前に、監督達がびびってしまっていたように思います。僕も名優を前にして、もちろんびびりましたが、びびらないでやるようにしました。(演出している時に)『ちょっとやってみて』と言われ、名優を前にして演技をしなければいけない時もありました。(笑)仕上げで駄作にするわけにはいけないと思い、通常の2倍の時間がかかりました」と語った。
主演の安田松太郎を演じた緒形拳はそんな奥田監督について「とても細やかな人。役者もやっていただけあり、映画の端々にまで気を入れて撮っていました。」また、5歳の杉浦花菜ちゃんとの久々に会って「今またあの苦労がまざまざと蘇えってきました。(笑)孫でもなく、恋人でもなく、でも宝物のような存在という難しい距離間を出すのが難しかったです。」
少女を虐待する母親を演じた高岡早紀は「実際に8歳と6歳の子供の母親として、最近子供を虐待する親が多いということに、本当に信じられない思いです。撮影では女優として、このようにしか生きられない一人の女性を演じました。花ちゃんは私に対して一人の女優として接してくれて、しかしピュアな子供の部分もあったりと、花ちゃんと演じられて良かったと思います。」
老人と少女と、旅の途中で出会う青年ワタルを演じた松田翔太は「奥田監督が、自分の存在を知っていてくれてとても嬉しくて、ドラマの合間をぬってでも出演したいと思いました。」と話す。撮影中には父、松田優作の17回忌を迎え、現場では黙祷が行われたという。
高岡早紀演じる横山真由美の情夫を演じた大橋智和は「監督には、俳優のイロハや、男とは何ぞやということまで教えてもらいました。(笑)とても楽しい現場で、ずっと撮影していたいという気持ちでした」。
最後に、作品を観た感想について緒形は「今まで自分が出演した映画を観ると、自分の(演技の)点数は辛口になるが、この作品は違った。これはなかなか良い作品だと思います。」と太鼓判を押した。
また、当日7月20日は緒形拳の誕生日ということで、杉浦花菜ちゃんより花束が贈呈された。
(t.suzuki)