ヨーロッパでは長い間問題となっている移民の問題を、ポップで軽快に綴っている作品『シュニッツェル・パラダイス』。

モロッコ移民のノルディップは、成績優秀で父親の期待を一身に受けて育ってきた。医学部進学を熱望されている一方、自分は何をしたらいいのかわからない。自分の生きる道を探すため、町のおちこぼれが集まるホテルの、地獄と化した厨房で皿洗いのバイトを始める。まわりには、移民としてオランダにやってきた祖父母をもつ3代目たちと、オランダ人の競り合いが常に起こっている。そんな時、ホテルオーナーの姪、アフネスと出会い恋に落ちる。ふたりは、文化の違いやしがらみを乗り越えられるのか? 
「移民という問題を、“問題”にしない映画を作りたかったんです。1970年にオランダにやってきたトルコ・モロッコ人の人々が、オランダ人が手にしたくない仕事をし始めて、映画に登場する世代が3代目になります。彼らはもはや移民ではなく、オランダ人というアイデンティティを持っています。移民たちとの間には宗教や文化の違いが当然ありますが、それを違いとはせずオランダの一部として理解してもらえるような前向きな映画を作りたかったのです。」と話す、脚本家のマルコ・ヴァン・ヘフェンさん(以下M)とプロデューサのレオンティン・プティさん(以下L)に上映後のQ&Aに答えていただいた。Q&Aには映画祭の実行委員会副会長である岡村幸四郎市長も参加された。

Q:現場ではアドリブも多かったのでは?
A(M):「はい。私なりのリサーチと、現場で俳優陣のなまの声を聞いて、いっしょに作品をクリエイトしていったので、脚本にはないこともしました。厨房でチーズを投げるシーンはアドリブでした(笑)。HDはフィルムと違って、無制限に撮ることができるので、可能な限りたくさんの撮影をしました。」

Q:「キャスティングはどのようにされたのでしょうか?」
A(L):「まず主役を見つけることが困難でした。モロッコ人の俳優は公の場でキスはしないので、本作ではチュニジア人のノア・ムニール・バレンタインを起用しました。ノルディップの父親役はエジプトの著名な俳優です。ただ、モロッコ系の俳優はオランダではまだあまり活躍の場がないので、経験が豊富な方は少ないですね。」

Q:「いろんな人種の方が出演されていますが、他国から連れてきているんでしょうか?」
A(L):「皆さんオランダ在住の方です。厨房でお肉を切っていたユーゴスラビア移民の役を演じたのはオランダでは有名な俳優さんです。」

Q:「厨房は本物の厨房を使ったのでしょうか?」
A(M):「残念ながらセットです。レベルの低い厨房に設定したのは、ノルディップがインテリな人物であるために、彼から見た地獄を分かりやすく演出するためです。撮影期間中は、クルーも食べ物くさくなって苦しい思いもしましたが(笑)、それだけの価値のある映画になったと思います。」

Q:「音楽はとても素晴らしかったです!」
A(M):「レックサウンドという音楽会社に依頼をして、ギタリストも素晴らしい方に音楽提供していただきました。映画に合うパワフルなサウンドが出来上がりました。」

(ハヤシ カナコ)

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2006 公式HP
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