ドイツ・スイス合作『クスクス』のセーレン・セン監督がSKIPシティで舞台挨拶とQ&Aを行った。
本作は研修女医カティアと、彼女と同棲している恋人のヘンドリック、そして不法滞在しているアルジェリア人女性・サイダの三角関係をドイツを舞台に描いたもの。人間誰もが持っている欲望と善意、それによって複雑に絡み合う人間関係をリアルに映している。

上映後は様々な意見が飛び交い、率直に感じたことを述べる観客も見られた。
「この映画を撮るにあたって、ドイツに住んでいるアルジェリアの方とたくさん話をしました。アラブ女性に対する偏見を感じられた方もいるかもしれませんが、私はドイツでの状況を見て欲しかったんです。ドイツ人の移民の捉え方はとても幅が狭いんですね。ヒロインのカティアは左翼派でインテリな女性でリベラル。彼女は善意をなそうとしているんですが、その気持ちや行動の裏には多くのヨーロッパ人のように罪悪感があるんです。そして罪悪感から生まれる善意で全て統合できるんじゃないかと思ってる。そういった誤解に注目したんです。」

『クスクス』のタイトルについては
「ドイツ語で”クス”は口付けを意味します。そして”クスクス”というのはマグレブの人達に食べられている食事なんです。」

カティアが主人公ではありますが、一部ヘンドリックの目線で描かれているところもありましたね。監督はどのキャラクターを一番近く感じていますか?
「やはりカティアですね。そしてヘンドリックにも少しアイデンティティを感じています。実はこの映画には、愛する人が別の人と結婚してしまったという私の実体験も入れました。サイダは私にとっては少し異邦人のような感じがあります。サイダを演じた女優さんはフランスの方なのですが、ドイツには本作の撮影で初めてきたそうで、ドイツ語がわからずに困惑していました。それは彼女の役づくりにプラスになったようでした。」

またスイスなどのヨーロッパ映画は日本で観る機会が少なく、残念な思いをしている人も少なくない。しかし実はヨーロッパでも公開されるのはアメリカ映画が多く、本国の映画はなかなか劇場を押さえることができないのだそう。監督にはメジャーな映画に負けることなく、これからも頑張って欲しい。

(umemoto)

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2006 公式HP
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