24日東京都写真美術館ホールで『ゴーヤーちゃんぷるー』の初日舞台挨拶が行われた。

学校で自分の居場所がなくなった日から、ひろみ(多部未華子)は自室に引きこもるようになった。パソコンの仄かな明かりだけがひろみの世界。パソコン上で出会った「ケンムン」が仕事をしている場所が西表島とわかったとき、ひろみの命の鼓動が再び始まる。島の人々の暖かさと、雄大な自然がひろみの心を癒していく。沖縄が持つ力と「親子の関係を強くするツールにしてほしい」と語る松島哲也監督が生み出した傑作だ。

「オーディションで出会った時に、多部さんの目力を感じて主役に抜擢しました。」と話す松島監督。「監督は現場ではいつもサングラスをかけていて、何を考えているのかわからなくて、今その言葉を聞いて安心しました。」と主演のひろみを演じた多部未華子さんは安堵した様子だった。沖縄での撮影は約3週間だったが、家に泣いて電話するほどのホームシックにかかってしまった、と笑顔で話してくれた。母親役で共演した風吹ジュンさんについて「本当にお母さんのように接してもらえてうれしかった。」と一年半以上前の撮影現場を思い出しながらも、恥ずかしそうに話してくれた。作品に登場する里子役の石坂みきちゃんと谷貝里緒菜ちゃんも登壇し、撮影時のエピソードや里子役という特殊な役を演じた感想も話してくれた。石坂みきちゃんはまだ10歳でありながらも「里子という実生活とはまったく違う役だったので、親のありがたみを感じることができた」と大人顔負けの発言をした。

この映画の魅力は、個性豊かなキャスト陣ももちろんのこと、あまることなく映し出された沖縄の自然にある。人間はもともと自然とともに過ごしてきた生き物であるのに、今あまりにも自然と触れあう空間がなさ過ぎる。「ぜひ沖縄に流れる豊かな時間を感じて欲しい。すごくほっとするし、いつでもなごめる場所がある」と話す監督の気持ちが痛いほどわかった。そしてこの映画のテーマである「親子の愛」とは。苦いものも・辛いものも・甘いものも混ざり合っておいしくなる『ゴーヤーちゃんぷるー』を召し上がってみてください。

(ハヤシ カナコ)