中途半端じゃ、生きている気がしないんだ。
暴力だけが、俺たちのアイデンティティ!

5月10日フットボールチーム“ウェストハム・ユナイテッド”のコア・ファンを描いた『フーリガン』のレクシー・アレキサンダー監督来日記者会見がパークハイアット東京にて行われた。

友人の仕掛けた罠によりハーバード大学を退学処分になったジャーナリスト志願のアメリカ人青年マット(イライジャ・ウッド)は、危険かつ陶酔的な暴力の魅力に取り付かれた“フーリガン”との世界と出会い、それまで眠っていた自己の闘争本能に目覚めてゆく…。

監督は、女性らしからぬ激しい暴力描写と大胆な演出が注目を集めているレクシー・アレキサンダー。記者の前に登場した監督は「日本に来れて嬉しいです」と日本語で挨拶。この映画を通じて、何故若者が暴力に陶酔するのかを解明したかったという。
主演のイライジャについては「彼のエージェントからこの役を是非やりたいと言われました。でも、その時は丁度『ロード・オブ・ザ・リング』の三部作目が上映中で、フロドのイメージが強く、フーリガンを演じるのは違うのではと思いました。実際彼と会ってみると、フロドとは異なり、今時の若者でありながらも、喧嘩をしたことがないマットに適役だと思いました」。
もう一人の主演、フーリガンのリーダー、ピーターを選ぶのには慎重だったと言う。「観客がピーターを好きにならなければ、この映画は成功しないと思いました。何人かの有名な俳優からこの役をやりたいと言われましたが、チャーリー・ハナムに会い、彼の太陽が射すような笑顔を見て、彼に決めました」。
また、この作品にリアリティを出すため、脚本家の一人にフーリガンの専門家を起用した。「彼は、フーリガンについて12冊の本を書いています。彼からフーリガン生活スタイルを学び、映画に盛り込みました。また、エキストラは全員実際のフーリガンか、元フーリガンにしました」。
監督の出身地であるドイツで、W杯が目前にせまっているが、ドイツではフーリガンを扇動しかねないという懸念から劇場公開はされていない。映画の噂を聞きつけた人々の上映を求める声が高まったが、W杯主催者側の要望により、結局上映には至らなかった。しかし、DVDにて発売され、記録的な売り上げとなったという。
『フーリガン』によって、様々なアクション作品のオファーが来たという監督。「大作の続編など、殆どのオファーは私がお金を出しても観たくない作品ばかりでした。(笑)私には養う家族もいないし、悪魔に魂を売りたくないので、これからも誇れる作品を作っていきたいです」と語った。
(t,suzuki)