3月22日都内にてオダギリジョー、香川照之主演『ゆれる』の完成披露試写会が行われた。

東京で写真家として活躍している弟・猛と、地方に残り実家の商売を継ぎ、温和で誠実な兄・稔。幼い兄弟の記憶に残る渓谷にかけられた一本の吊り橋で起こった事件をきっかけに生じた、二人の兄弟の葛藤を描いた物語。

猛を演じたのは国内外の映画祭で快進撃を続ける、オダギリジョー。西川監督について「脚本を読んで、よくこのような話が頭で組み立てられるなあと思いました。同世代の者として、自分には手の届かない才能を持っている監督に、嫉みを覚えました」。演技については「20代で出来るすべてを出し尽くせたと思います」と語る。兄・稔役の香川については、本当の兄弟のように思えたという。「話していくうちに、役者について考えていることの共通点が多くありました。香川さんとでなければ、あのような空気は作れなかったと思います」と、公私共に息が合った様子。

「若い女性(監督)が男兄弟のこのような話を書けるはずがないと驚いた」というのは兄・稔役の香川。「街で会ったら、ナンパしようかと思う程、かわいい女性です。誰がこの外見から、あのとぐろを巻いた黒い何かを持っている人間だと想像できるでしょうか。(笑)初めて脚本を読んだ後、しばらくぼーっとしていました」。稔については「最初に脚本を読んだ時に、何故こんなに僕のことを分かっているのかと思う位、稔は僕自身でした」と語った。

前作『蛇イチゴ』では、日本の典型的な家族の崩壊劇をシニカルに描き、国内で数々の新人賞を獲得した西川美和監督。『ゆれる』は「卵をあたためるように、大切に育ててきた作品です」という。兄弟を演じた、オダギリと香川については「二人は、タイプの違う俳優だと思ったので、良い意味でけんかをしてくれればと思いました。二人は日を増すごとに、実際の兄弟のようになり、それは映像にも表れていると思います。兄弟に限らず、人と人との関わりにおいて、すべてを露わにした上で関係を続けてゆくことはできるのかを描きました。二人に脚本を育ててもらい、良い作品にできたと思います」と満足気に語った。
(t.suzuki)

★今夏、渋谷アミューズCQN,新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

□作品紹介『ゆれる 』