冬子、29才。とりとめない生活の中に生じた唯一確かなこと、ただいま妊娠9ヶ月、まぎれもない妊婦であること。でも、十月十日を過ぎても、産気づく気配はなく、お腹の子供はまだ外に出たくないらしい。
——— どうしたら子供は生まれてくる?

1月16日、都内にて、”フシギで、ウレシクて、ステキな結婚・妊娠・出産ムービー”『三年身篭る』プレミア試写会の初日舞台挨拶が行われた。

監督は、卓越した演技力と不思議な存在感で、塚本晋也、黒沢清、崔洋一ら、日本を代表する監督の作品に出演してきた女優の唯野未歩子。監督は女優として映画に関わるうちに、映像の世界に魅了されて、美術大学の映像コースに入学。映画制作を学び、今作『三年身篭る』で、長編劇映画監督・脚本家デビューに至った。
主演は、映画初出演にして初主演の中島知子(オセロ)。監督の中島との面接はわずか5分で終了したという。中島「面接の時は、主役(冬子)が私で良いのかな、と思っていました。でも、その時で主役は決まったみたいです」監督は、中島を選んだ理由について「会った時に、少女のように清廉な感じがして、すぐに決めました。普段のパリっとした感じと冬子は異なりますが、演じるうちにどんどん役になりきって貰えました」。
中島演じる冬子の夫を演じる西島秀俊は、唯野監督とは役者として共演したことがある。「女優として唯野さんは、怪物。自分とはレベルの違うところで演技をしていました。なので、演出される側になるのは恐怖でしたが(笑)、良い現場でした」中島については「とても映画初主演と思えない程堂々としていて、やりやすかったです」
冬子の妹・緑子の恋人を演じた塩見三省は作品について「女性は男性をこのように思っているのかと思いました」
冬子の母を演じた木内みどりは3年妊娠するというストーリーについて「3年お腹にいれば、子供との相性も分かるし、波長が合ったところで出てきていいんじゃないかと思います」と話した。

監督は「動物は生まれてすぐに歩くことができます。人間もそうなれば、充足した妊娠期間となるのではと思い書きました」と3年身篭るというアイデアについて話した。
この時代を生きる私達にとって”親になるとは?””大人になるとは?””愛とは?””家族とは?”を、妊娠を通じて探るタダノ式コメディ。(t.susuzki)

★2006年1月28日、新宿武蔵野館にてロードショー

『三年身籠る 』