シングルマザーの美由紀は、10歳の息子ケイジをキッズ・モデルとして成功させようと、幾つもの習い事をさせ、オーディション通いをしている。でもケイジはモデルの仕事が好きなわけではない。こんな母と息子の心はどこか擦れ違っていて、ママの恋人の登場でさらに溝は深まっていく。子供は大事だけど母親だって恋をしたいし。時には誰かに頼りたくなる。女性としての自然な気持ちに従う美由紀に、幸せは訪れるのだろうか?

12月17日(土)、映画『愛してよ』の初日舞台挨拶がシアター・イメージフォーラムで行われ、先ほど上映を観終わりまだ余韻が残っている観客の前に出演者やスタッフが姿を現した。
登壇したのは西田尚美演じる美由紀の息子・ケイジ役で映画初主演の塩顕治くん、美由紀の前夫役でケイジの父親・亘役の松岡俊介さん、タカシ役のアレクさん、アキラ役の伊山伸洋さん、企画・製作の石井渉さん、そして本作の監督・福岡芳穂さん。

まず、企画・製作の石井さんが「今日は『キング・コング』ではなく本作『愛してよ』を観に来てくれてありがとうございます!(笑)」と挨拶をするとのっけから笑い声が。松岡さんは「いかがでしたか?重かったり楽しかったり色々な要素の入った映画ですが。」と観客の反応を伺い、「僕は最初この話をお断りしたんです。好きではない描写が含まれていたからです。しかし台本は素晴らしかった。最終的には出演することになったのですが気持ち的にはジレンマもあり複雑でした。」と語る。本作を撮ろうと思ったきっかけについて監督はこう述べた。「子供とどう向き合うべきか…という思いで作りました。今の社会・自分自身を見つめたいと考えたのです。」そして監督は主役の塩くんの演出にも工夫を凝らした。子供の自然な反応を撮りたいと言う事で台本は渡さずに撮影に挑んだのだ。塩くんは「劇を自然に出来て良かった。台本がないのはやっぱり不安だったけど(笑)」と照れ笑いを浮かべ、他の出演者たちも「劇中で僕は泣くシーンがあるんですが、監督から泣き真似はしなくていい、泣けないなら泣かなくていい。と言われたんです。思わずじーんときました。」(伊山)、「演技は僕初めてだったんですが、監督から役作りでなく気持ちでやれと言われました。僕は虐待される子の役でとても辛かった。なんとも言えない気持ちになったんです。」(アレク)とそれぞれ撮影当時を振り返った。

最後に監督が、「この映画は観て頂いた方の中で完成すると思ってます。それぞれの方が何を感じるか…自分の中で持ち帰り、周りの人と話し合ってからまた観に来て頂きけたら嬉しいです。」と語った。

(Naomi Kanno)

※2005年12月17日、シアター・イメージフォーラムにてお正月ロードショー
◇作品紹介
『愛してよ 』