「ゲルマニウムの夜」の初日舞台挨拶が今作品のために特別設営された、上野の東京国立博物館敷地内にある一角座にて行われた。「ゲルマニウムの夜」はこの一角座でしか上映されないが、この作品が上野から発揮する映画本来の力には強烈なものがある。荒戸源次郎氏製作総指揮のもとに、演劇界の先鋭が集まり創出された“ゲルマ”の世界は私達に現存する混沌を見せつけるのだ。
朧(ロウ)を演じた主演の新井浩文さんは性の狭間を錯綜するという役を演じたこともあり「僕は女性一筋ですから!(笑)」と豪語していた。ご本人がいう通り、今までは名脇役としてと捉えられていたが「この作品から、主演でもいけると思って欲しい!」と熱いコメントを残した。シスターテレジア役の広田レオナさんは「何度も申し上げていますが、肋骨は2本折りましたし、肺炎にもなりかけました…。監督には散々な目にあわせていただきました。」と現場の白熱した雰囲気を醸しだしていた。広田レオナさんは先日俳優の吹越満さんとの離婚が成立したばかり。しかし、ひとりの女として凛として立っている彼女は女性としてとても美しかった。また“ゲルマ”でデビューを飾る教子役の早良めぐみさんは「この作品が最後でもかまわないという気持ちで望みました。ぜひたくさんの方にみていただきたいです。」と、この作品にかけた意思の固さを感じさせた。早良さん同様、この作品でデビューを飾る大森立嗣監督は「この作品には私の35年間全てがつまっています。観ていただければわかります。父も弟もでてますし(笑)」と初監督ながら、ユーモアを含みながら確固たる自信を感じさせた。
「ゲルマニウムの夜」は一角座で、半年は上映される予定である。ここでは敢えて作品解説はせず、直接劇場に足を運んでいただきたい。“ゲルマ”の世界と外の世界に通ずるものを感じることは貴方にしかできないから。

(ハヤシ カナコ)

◆作品紹介◆
ゲルマニウムの夜