教師だった父が、末期がんでもうすぐいなくなる。最期を看取るため、自宅介護がはじまった。一生教師だった父。しかし厳しい教師だった父を見舞いに来る教え子は一人もいない。そして、僕が教える子供達は死の意味が分からない。インターネットの死体写真、斎場への寄り道。どうしていけないの?と言う彼らの問いに、僕は何も答えることが出来ない。父さん、死ぬってどいういうことだろう。父の最期の授業。そこに言葉はなかった——

11月21日、旧赤坂小学校体育館にて『あおげば尊し』完成披露記者会見が行なわれた。監督は、かつて映画『病院で死ぬということ』で、終末医療のあり方やその家族を描いた市川準監督。そして主演は、テレビでコメンテーターや斬新な企画などで活躍しており、映画初出演にして初主演となる、テリー伊藤。「お涙頂戴ものになりそうなストーリーだが、テリーさんが入ると、今時のビビッドな作品になる」とテリー伊東を抜擢した理由について市川監督は語る。なかなか決まらなかっという主役。監督がテリー伊藤の名前を出した時、プロデューサーはあっけにとられた顔をしたという。しかし、「テリーさんの存在をすぐに思いつかなかったことを反省している」と言う程、テリー伊東の存在はこの作品に、なくてはならいものとなっている。

テリー伊藤本人は薬師丸ひろ子、麻生美代子、加藤武といった実力のある俳優陣に囲まれ、足を引っ張らないかと心配した。監督に、「演技をしなくていい」と言われ、素の自分でいればいいのだと思ったという。末期ガンの父親を持つ子供という役について「実際、僕の父親が倒れた時、どうしていいのか分からなくてとまどいました」と、過去の自分と重ねながら演技に取り組んだ。そんなテリー伊藤が演じる息子と、最期を迎えようとしている父との不器用な会話に、薬師丸ひろ子は、泣く必要の無いシーンにもかかわらず、床に涙が落ちるほど泣いたという。

「自分がテリー伊東であるという意識がなく、映画以外の仕事をするのがうっとうしく感じるくらい映画に没頭していました」とテリー伊東。今までテレビでは見せた事のないテリーが映画には生きている。

等身大の家族を通じて”家族”と”死”を描いた今作。私達が子供達に伝えなければいけない、そして、大人になっても答えを探し迷い続ける私達への一つの答えがここには示されているだろう。『あおげば尊し』は1月、シネスイッチ銀座、新宿K’cinemaにてロードショー。
(t.suzuki)