アジアを中心とし、世界から独創的で創造力みなぎる作家たちの作品を集め、日本に紹介し、今年６回目を迎える東京フィルメックスがが、11月１９〜１１月２７日の期間中開催されている。

大晦日の夜、かつてのバンド仲間が集まり、３年前に自殺した女性メンバーを偲び、過ぎ去った青春を思い起す。今作品『マジシャンズ（仮題）』のソン・イルゴン監督は、９９年に監督した『最後のピクニック』がカンヌ映画祭短編コンペティションで審査員特別賞を受賞。２００１年、デジタルビデオで撮影した初の長編作品『フラワー・アイルランド』ではヴェネチア映画祭「現代の映画」部門で上映された後、プサン映画祭、東京フィルメックスで最優秀作品賞を獲得している。『マジシャンズ（仮）』は、９５分をワンカットで撮り、その中で現在と過去が見事に交差している。元々は、韓国のチョンジュ映画祭で毎年三人の映画作家が短編を製作する『三人三色』の一環として製作されたものであり、ロングバージョンは東京フィルメックスが初めての上映となる。

９５分という長さをワンテイクで撮ったことについて、監督は「ワンテイクでとることで、観客に現実のものとして見てもらいたかった」と話す。しかし、この撮影方法はスタッフ、俳優共に、全く予測のつかないものだった。臨場感を出すため、同時録音にこだわり、韓国映画界の名立たる録音スタッフが３チーム携り、照明は通常の撮影の２〜３倍使用。
カメラは2人で交代しながら撮影したが、カメラを持ったままあちこち移動し、腰が痛めた。撮影は寒空の下で行われ、鼻水を垂らしたまま（拭くと画面がぶれてしまうので！！）カメラを回したなど、多くの苦労の中、撮影は進められたが、撮影のパク・ヨンジュンは「僕が良かったと思うのは、あまり深く考えずに撮っていたことです（笑）」と、笑顔で話した。

作品では、主人公達がお酒を飲むシーンが多くある。監督は「韓国では、お酒を飲みながら騒ぐという文化があります。そういう部分が日本の皆さんにも共感してもらえたらと思います」と話した。

監督いわく、これは悲しいコメディ。そう、ストーリーを読む限りはしんみり切ない話かと思いきや、笑える部分も多くある。特に笑えるポイントは“お坊さん”。どんな登場かは観てのお楽しみ。
（t.suzuki）

『マジシャンズ（仮題）』１１／２０（日）１８：２０〜 ,１１／２４（木）１０：３０〜朝日ホールにて上映
第16回東京フィルメックス公式HP