東京国際映画祭2005:アジアの風『呪い』ティーチ・イン
あるバレエ団で起きた不可解なプリマ殺人事件を巡るサスペンス・ミステリー。そうこの作品を、事前に告知されたように中国では珍しい本格ホラーと思って見ると肩透かしをくらうだろう。本作が長篇監督第2作となるリー・ホン監督の主眼は、全く別のところにあるのだから。
「私はこれをラブ・ストーリーとして撮ったつもりです。確かにサスペンスやホラーの要素も盛り込んでいますが、愛の物語を表現したいと思いました。映画を撮る上で一番大事なのは、人間の情感をいかに表すかだと思うんです」(リー)。
27日の上映後のティーチインでリー監督はそう語った。登場人物の役名が演じる役者と同じなのも、それぞれの役者が自然に役に入って行き易くし、情感をこめ易くするためのものなのだとか。でもそれにしてはこのタイトル(インターナショナル・タイトルも『ローラの呪い(劇中劇のタイトルでもある)』は、ホラーファン、ラブストーリーファンのどちらにも不親切ではなかろうか?
「最初に私が考えたタイトルは『秘密』でした。『ローラの呪い』でも悪くはないかもしれませんが、『秘密』の方がよりストーリーにマッチするのではと。しかし興行サイドからの要望もあり、結局『呪い』に落ち着きました。劇中劇の“ローラの呪い”がどのようなものかはあまり明らかにしない方がいい、秘密の呪いと言う意味合いもあったんですが、果たしてどうでしょうかね。でも、『呪い』とつけることでより多くの観客が映画館に足を運んでくれるのではというのもありましたよ。多分『呪い』というタイトルに惹かれて見に来てくれた方も、映画を見終わった時には私が描きたかった人物の関わりが織り成すストーリーや感情の揺らぎをきっと感じとってもらえるのではないかと思います」(リー)。
興行サイドの思惑をも、逆手にとって自らの世界を通すリー監督。その美貌の下には、なかなかしたたかな作家根性を秘めているようだ。
(殿井君人)
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