「お父さん、あなたの昭和は幸せでしたか?」
昭和の映画全盛の一時代、映画と映画の間にささやかな芸をして楽しませてくれる芸人さんがいたことを覚えているでしょうか。本作はそんな一人の幕間芸人の人生を紐解く旅の物語。

原案の秋田光彦が子供時代に見た幕間芸人、その記憶が本作の出発点になっており、学生時代に聞いたその原案がずっと心に残っていたという佐々部清監督(『チルソクの夏』『半落ち』『四日間の奇蹟』)が遂に本作『カーテンコール』を完成させた。

11月9日(水)、シネスイッチ銀座にて『カーテンコール』絵看板除幕式が開催され、主人公・香織を演じた伊藤歩さん、修平を演じた藤井隆さん、看板絵師・久保板観さんがマスコミの前に姿を見せた。

本作を観て感動し、ぜひ“絵看板”を書かせてくれ!と名乗り出たという看板絵師の久保板観さんは、「自分は昭和30年代に青梅にある本物の映画館で絵看板を書いていました。子供の頃から大きな劇場に自分の書いた看板を飾り、映画で始まり映画で終わる…という人生が夢だったんです。でも時代の移り変わりによってTVなどが普及してくるとそうもいかなくなり行き場を失ってしまった。でも自分は夢をずっと追い続けていた。そんな時本作に出会ったのです。藤井さんの役は私にすごく当てはまる部分を沢山持ち合わせている。だからこうして絵看板を完成させ、このような場でお披露目できるなんてとても嬉しい。明日どうなってもいいくらいだ。」と語った。
それを聞いた伊藤も「なんだか久保さんのお話を聞いてたらぐっときてしまいました。人生を重ね合わせる事が出来るくらい素敵な作品に参加でき光栄に思います。あと現場で絵看板を目にした時に、私もこんな風に書いてもらえたら嬉しいなと思っていたので今すごく嬉しい。これが一生で一度の経験だと思います。ありがとうございます!」と笑顔で返した。藤井も「早く観てみたい!」と興味津々な様子で布が掛けられた看板を下から覗き込む。

そしていよいよお披露目の瞬間。絵看板に掛けられた布に繋がれた紐を3人で持ち一斉に引くと、そこには泥絵の具で描かれた『カーテンコール』の絵看板が立派に聳え立っていた。
もちろん伊藤と藤井の顔も泥絵の具で丁寧に描かれている。
大喜びの2人を前に「こんなに喜んでくれるなんて…涙が出てしまう。藤井さんのカーテンコールだけど、私のカーテンコールであるようにも感じる。」と思わず涙ぐむ久保さんに、伊藤と藤井が優しく寄り添う場面もあり除幕式は無事幕を閉じた。

その後、本作について「自分の映画なのに沢山観終わった後泣いてしまいました。私はずっと映画の世界でやってきていますが、映画全盛期のパワーをこの作品を観て感じました。今後私も映画にパワーを与えられるような女優になりたいです。」(伊藤)、「映画館で観るからこその楽しさをもう一度思い起こさせるような映画です。父と母にも優しく出来る瞬間が沢山詰め込まれた映画でもあります。この撮影ではまさに夢のような時間を過ごせました。ギターには苦労したけど皆が支えてくれたからこそできた事ばかりです。1人でも多くの方に観て頂けたらと思います。」(藤井)と力強く語った。

(菅野奈緒美)

※2005年11月12日(土)シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

◇作品紹介
『カーテンコール 』