昨年の「アジアの風」部門で特集上映されたポスト「ウォン・カーウァイ」との呼び声も高い香港映画界の新鋭パン・ホーチョン監督。典型的モラトリアム大学生4人組が、日本からお気に入りのAV女優を呼んで撮影と称して彼女と…ともくろむコメディ『AV』で今年もTIFFに登場した。イケメン揃いの男性俳優陣に加え、日本のAV女優・天宮まなみが本人役として出演していることも話題となっているこの作品。ホーチョン監督は「日本のAV女優と協力して作品をつくる、という僕の夢がかなってうれしいです。」と劇中の主人公たちが乗り移ったかのようなご挨拶。
AV産業大国である日本のあまたの女優たちからなぜ天宮を起用したのか?と問われたホーチョンは「はじめに情報収集として何人かの女優さんの作品をみてから決めるつもりでお店にいったんですが、彼女を一目みてすぐに「決めたぞ!」と周りに宣言してしまいました。でもなぜ彼女だ!と思ったのかは自分ではわからなかった。」と直感であったというホーチョンだったが「僕の幼馴染(本作の音楽を担当)からは、中学の時僕が好きだった女の子と天宮さんがそっくりだ!と言われました(笑)。彼女とは今でも会うと、ドキドキします。」と天宮を通した遠い日のせつない胸のうちを語ってくれた。
また、天宮のマネージャーとして登場する俳優の役名に、「アジアの風」部門のプログラミングディレクターである暉峻創三氏の名前が使われていたことについて、「僕はよく友人の名前をそのまま登場人物に借りることがよくあるんです。今回日本人男性が登場するということで使わせていただきました。暉峻さんとは2001年のデビュー作『ユー・シュート、アイ・シュート』(昨年同映画祭で上映)からの知り合って、とても親しい友人なのです。」と。また、映画制作でもっとも重要だと思うことは?という問いには「裏方のスタッフの力だと思います。作品が成功するかしないかの鍵はほぼ彼らが握っています。僕は映画を作るとき、いつも仲間と強盗に入りにいくような感覚をもってるんです。誰でも強盗に入るときは、初めての知らない人と組むより、気心が知れている自分の仲間と組みたいと思いませんか?だから僕の映画はいつも同じスタッフで、ほぼ固定してるんです。」と結束の固いホーチョン組の存在も教えてくれた。傑作が多いホーチョン作品だが日本では映画祭以外ではまだ未公開。もっと広く日本の観客の目に触れることを今後期待したい。
(kaori watano)

■東京国際映画祭
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